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那須川天心「テンシンは未完成だった…だが焦るな」英国人記者が指摘する“高速育成プラン”への懸念「敗戦は恥ではない」来年は“土台の作り直し”
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/11/27 11:03
試合後会見での那須川天心。20分以上にわたって報道陣に対応した
タクマがペースを上げた第3ラウンド以降、テンシンへの問いはこうなる。
「じゃあ、君はどうする?」
しかし、今のテンシンはその答えを持ち合わせていなかった。タクマが見せたボクシングスキルとリングIQに、テンシンは対応し切れなかった。
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総合格闘技で豊富な実績があるテンシンのボクサーとしての“高速育成プラン”について、私は当初から懸念していた。その後、彼が順調に伸びてきたので信じるようになった。しかし、今回で “まだ土台が足りない” という真実が明らかになったのだろう。前に進むために、一度大きく後ろに下がる必要がある。
初黒星を喫した後でも、テンシンには劇的な成長が可能だという私の考えが変わったわけではない。時間はまだたっぷりある。同じ興行に出ていた元アマ世界王者のトモヤ・ツボイ(坪井智也)は29歳だが、テンシンは27歳。成長途上のボクサーであるテンシンがプロでの先輩であるタクマに負けたことは恥でもなんでもない。私は110-117で敗れたと見たが、中にはテンシンが4、5ラウンドを奪ったと見た人もいる。
とはいえ、勝者が一人だけだという真実も見つめなければいけず、これからテンシンはキャリアの岐路に差し掛かるのだろう。今戦から何も学ばず、また世界のトップレベルと戦えば、同じ結果になってしまう。今やるべきは、後退を恐れずに立て直すこと。今回の試合は、「完成したプロ」と「未完成のプロ」の戦いであり、未完成のテンシンはしっかりと学んでいかなければらない。

