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那須川天心「テンシンは未完成だった…だが焦るな」英国人記者が指摘する“高速育成プラン”への懸念「敗戦は恥ではない」来年は“土台の作り直し”
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/11/27 11:03
試合後会見での那須川天心。20分以上にわたって報道陣に対応した
焦点を具体的に指摘すれば、やはり“攻撃のバリエーション不足”を解消することが重要になる。テンシンのオフェンスはジャブ、ダブルジャブ、ワンツーに限られ、そのパターンをタクマに把握されてしまった。3ラウンド以降、タクマに適応され、その後にペースを再び手繰り寄せるだけの武器を持ち合わせていなかった。苦しい状況で放った大振りのアッパーカットも機能しなかった。
ディフェンス面では頭が真っ直ぐライン上にありすぎたのも問題だ。フットワークが頼りの防御はおそらくキックボクサー時代の癖であり、頭を振らなかったがために拓真には右を何度も当てられていた。
繰り返しになるが、これらの課題はこれから先に克服できる。ポイントはとにかく焦らないことで、まずは土台を作り直してほしい。個人的な希望を言えば、2026年は“純粋な学習期間”にするのがベストだと思う。できればハイペースで試合をこなしてもらいたいし、場合によってはそれが2027年までかかっても構わない。当面の相手は世界ランカーである必要はないし、リングマガジンの階級ランキングにランクされているような筋金入りの強豪ではなくてもいい。今の日本には周辺階級に素晴らしいスパーリングパートナーがいるし、向上の手段はたくさんある。
“つまずき”を“踏み台”に変える
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日本ボクシング界は現在、海外の関係者からも注目されるほどの盛り上がりを見せているし、今後も続いていくのだろう。その中でもテンシンが重要な存在であることに変わりはない。テンシンの人気、知名度は大きくは変わらないはずで、彼と戦いたい選手も、その試合を見続けたいファンもたくさんいるはずだ。
11月24日、テンシンが東京で相手にしたのは“最高のタクマ”だった可能性がある。あれほど仕上がったタクマは私は見たことがない。だから負けは恥ではない。大事なのは、これを“つまずき”ではなく“踏み台”に変えること。とにかく“経験”が必要であり、それを得るためにも今後しばらくは貴重な時間になるのだろう。〈つづき→井上拓真編〉


