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「16歳の私と26歳の彼」禁断の恋から生まれた息子が、世界陸上王者に「これからも厳しく指導しますよ」ブラジル競歩の英雄の母はパワフルすぎた
posted2025/12/03 11:03
世界陸上で金メダルを獲得したブラジル人カイオ・ボンフィム一家。現地ブラジリアに足を運ぶと、とても幸せそうだった
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Hiroaki Sawada
9月に行なわれた東京2025世界陸上男子競歩35kmで準優勝、20kmで優勝したカイオ・ボンフィムは、競技中に結婚指輪をなくしたことで話題になった。カイオと妻のストーリーについては前の記事で触れたが――彼を取り巻く環境、両親を含めた家族との物語も興味深い。
カイオはブラジルの首都ブラジリア郊外の小都市ソブラジーニョで生まれ育った。
母親ジャネッチさん(ブラジル陸上代表コーチ)は女子競歩の元国内王者だったが、「陸上競技をやれ、とは言わず、僕が興味を持ったことを自由にやらせてくれた」(カイオ)。フットボール、バスケットボール、水泳、テニスなど様々なスポーツを楽しんだという。
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その後、カイオは16歳で競歩を始め、以来一貫して、両親が運営する地元の陸上クラブで練習を積んでいる。まずは父ジョアンさんに話を聞いた。
父はカイオのフィジカル面を育てた
――ご自身の陸上選手としてのキャリアを教えてください。
「高校時代に陸上競技を始め、主に5000m、3000m障害の選手だった。大学で体育学を専攻し、ソブラジーニョ市内の高校の体育教師になると共に、高校の陸上部のコーチを務めた。そこでジャネッチと出会った。当時高校1年生で、長距離の選手だった」
――どんな選手でしたか?
「一生懸命練習していたんだけど、同じ高校にもっと強い選手がいて、なかなか良い成績を残せなかった。高校を卒業後、1983年に私が立ち上げた陸上クラブ(ソブラジーニョ陸上クラブ/略称CASO)で練習をするようになり、1990年に結婚した。翌年、カイオが生まれ、出産後に競歩へ転向し、それから良い成績を残せるようになった」
――カイオには16歳のときに競歩を勧めたそうですね。
「陸上競技の素質があることは、そのずっと前に気付いていた。でも、本人がフットボールが好きだったので、無理に陸上をやらせることはしなかった。その後、ちょうど良い機会があったので、競歩をやることを勧めた。実際に、大変な才能の持ち主だった」
――カイオは「父は、フィジカル面で僕を指導してくれている」と感謝しています。
「これからも、彼のサポート役に徹するよ。そして、自分の陸上クラブで彼に続く選手を育てたい。五輪にはこれまで9人が出場している。9月の世界陸上にも、5人を送り込んだ。カイオ以外にも、大勢の選手を育てたい」
私が16歳、彼が26歳…恋に落ちた
続けて母ジャネッチにも話を聞くと、非常に興味深いパーソナリティだった。

