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「16歳の私と26歳の彼」禁断の恋から生まれた息子が、世界陸上王者に「これからも厳しく指導しますよ」ブラジル競歩の英雄の母はパワフルすぎた 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byHiroaki Sawada

posted2025/12/03 11:03

「16歳の私と26歳の彼」禁断の恋から生まれた息子が、世界陸上王者に「これからも厳しく指導しますよ」ブラジル競歩の英雄の母はパワフルすぎた<Number Web> photograph by Hiroaki Sawada

世界陸上で金メダルを獲得したブラジル人カイオ・ボンフィム一家。現地ブラジリアに足を運ぶと、とても幸せそうだった

「カイオは、神様が私たちに授けてくれた偉大な才能。教え子にして息子だから、私にとっては二重の喜びなの。でも、これからも厳しく指導しますよ(笑)」

――あなたは2023年と24年の国内最優秀陸上コーチに選ばれ、表彰されています。

「それは、カイオが良い成績を出してくれるお陰なのよ」

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――カイオは幼少期、ブラウ症候群という難病に苦しんだそうですね。

「1歳を過ぎた頃に両足が曲がり始め、毎月、病院へ連れて行って治療を受けた。でも、どうしても治らない。2歳のときに手術を行なって完治したんだけど、とても心配した。その子が競歩の世界チャンピオンになるとは、想像もできなかった」

劣悪な練習環境…写真をどんどん出して頂戴!

――彼の今後のキャリアをどう展望しますか?

「37歳で迎える2028年のロス五輪は、彼のキャリアの集大成になる。表彰台の一番高い所に昇ってほしい。2032年のブリスベン五輪は41歳になっているけど、本人の体調とやる気次第。出場は不可能ではないと思います」

――最後に……こう言っては大変失礼なのですが、このスタジアム(ブラジリア連邦直轄区所有)のトラックは劣化が著しい。「これが世界王者が練習する場所なのか」と驚きました。 トラックの写真を出しても問題ありませんか?

「どんどん写真を出してちょうだい! このスタジアムは管理がお粗末。このトラックも、毎年、取り換えるといいながら取り換えてくれない。でも、私たちは劣悪な環境にも負けません!」

夫婦、両親とも深い愛情と強い信頼関係だった

「元陸上選手で陸上競技の指導者である父は僕のフィジカル面を、元競歩選手の母は僕の技術面を指導してくれる。二人の指導、そして妻と子供たちの励ましがあるからこそ、僕は世界で戦うことができる」

 カイオは両親の存在についてこう語っていた。温和で愛嬌のある奥さん、厳格な指導者のお父さん、えらく気が強いが茶目っ気たっぷりのお母さん……。カイオが人間性豊かな人々に囲まれ、彼らの渾身のサポートを得て華々しいキャリアを築いていることがよくわかった。

 カイオは今後について、来年2月にも日本選手権(神戸)に招待選手として参加予定とのことで、その後、友人である山西利和と日本国内で合同練習をする話をしているという。さらにこうも意気込む。

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#カイオ・ボンフィム

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