敗者・那須川天心の“誤算”「焦りですか？ ありましたね」公開採点で生まれた“迷い”…井上拓真陣営「いける、これは勝てる」神童はなぜ敗れたのか？ 

「やり続けますよ」言葉に力が入った瞬間

　那須川の敗因を一言で表現してしまえばやはり「経験の差」ということになるのだろう。拓真はこれまでに何人もの実力者と対戦し、ダウンも敗北もヤジが飛んでもおかしくないような凡戦も経験してきた。

　那須川はこの試合に向けて現役の世界王者を含む5人のスパーリングパートナーを海外から招聘した。この試合に向けて力をつけたのは間違いないが、やはり練習と試合は同一ではない。そう考えるとわずかボクシング8戦目の那須川が経験豊富な元世界王者、拓真に目の色を変えてボクシングをさせたという時点で大いに評価されるべきなのかもしれない。

　決して恥ずかしい敗戦ではなかったが、負けたことは紛れもない事実である。那須川はこの屈辱を正面から受け入れ、堂々と胸を張り、前を向いて進んでいく旨を記者会見で宣言した。進退に関する質問がなされると、那須川が「何を言ってるんですか」とばかりに言葉に力を込めた。

ADVERTISEMENT

「やり続けますよ。それを見せての自分の生き方だと思いますから。みんな人間ですからほんとにやり続けるしかないですよ。やり返します、必ず」

試合後会見での那須川天心。20分以上にわたって報道陣に対応した　©Takuya Sugiyama

　那須川天心のボクシング人生はまだ始まって2年半だ。前向きにとらえるなら2025年11月24日の試合はボクサーとしてより幹を太くするために必要な一敗だったのではないか。拓真の勝利に終わった注目の日本人対決は、今後の那須川に大きな期待を寄せたくなる一戦でもあった。