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「まんまとオシムさんの罠にはまっていた…」阿部勇樹がいま明かす“恩師・オシム像”「オシムさんには“他人の真似はするな”と言われました」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byJ.LEAGUE
posted2025/12/02 17:00
いまなお日本サッカーに影響を与え続けているオシム
「オシムさんがどう言葉を選び、どんなタイミングで自分に言葉をかけていたのか、選手のときには考えられませんでした。今は自分が指導者になって、意味があってあのタイミングで言ったのだろうなと思います。彼は直接はっきりと答えを言わない。言われたことを選手がどう捉えるか。答えはひとつではないので、それを考えさせるような問いかけをする。怒ることもあるけれど、その後にフォローがある」
観察眼に優れたオシムは、怒ってもいい選手とそうでない選手を識別していた。
「プレー面だけでなく、ピッチ外のところも選手それぞれの特徴を把握しているから、こいつには強く言っても大丈夫だと。それは名前が短い(オシムが名前を呼びやすい)阿部とか巻(誠一郎)とか羽生(直剛)とか、言われてもへこたれない選手で(笑)、結果的にそういう選手が試合に出ていました」
サラエボを訪れた阿部にオシムが贈った助言
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ただ、考えた末にわざと怒っているのではなく、それがオシムにとっての自然な行為だったと阿部は感じている。そしてオシムのようにはなれないとも。
「彼のように選手を怒れればいいのですが、自分としては意図的に言うことしかできない。怒るためには場数や経験が必要で、僕は彼の域にまでは行けない。だから真似はできないし、オシムさんにも『他人の真似はするな』と言われました」
オシムが今の自分を見たらどう思うか。
「怒られるんじゃないですか(笑)。甘いなあと。優しすぎるんじゃないかって。でも、以前よりは大分(選手に)言うようになりました。この4年間で少しは積み上げられたと思っています」
'17年12月、阿部はオフを利用してサラエボのオシムを訪ねた。将来は指導者への道を考えていた阿部に、「お前はいつ指導者になるんだ」とオシムは問いかけ、幾つかのアドバイスを贈った。
「数年後のサッカーがどう変わっていくかを感じながらやっていくのがいいと。常に先、先を考えることが大事で、選手や指導者に何が求められるかを予測する。難しいですが、考えることはもともと好きですから。というか、オシムさんに好きにさせられたので(笑)」
真似のできないオシムの指導法。その最たるものは、独自のトレーニングだった。
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