#1132
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「悩んだら苦しい方に行けよ」日本サッカーを変えたオシムは“チルドレン”のマインドをどう変えたか「私の言うことを信じるな」《阿部勇樹、坂本將貴の証言》

2025/11/20
日本サッカーを変えた偉大な師が逝去して早くも3年。薫陶を受けた“チルドレン”は指導者へと羽ばたいた。ムードメイカーと主将だった2人が当時の秘話と立場が変わって改めて感じるその凄みを明かした。(原題:[哲学者の教え]イビチャ・オシム「悩んだら苦しい方に」)

〈私の言うことを信じるな〉

 そう平然と言い放つイビチャ・オシムに対し、接した人間はなぜか誰もが惹きつけられた。独特の方法論とサッカー哲学を持つ監督にして、人間としてのスケールの大きさを兼ね備えた人格者。オシムの一般的なイメージである。だが、選手がトレーニングで言われた通りのことをすると、この言葉をもってして怒られるのだった。

 オシムが日本で監督を務めたのは、ジェフユナイテッド市原(当時)の監督に就任した2003年1月から、脳梗塞で倒れて日本代表監督を辞任した'07年11月までである。その間にオシムは、とてつもなく大きなものを日本に残した。サッカー観は未来を先取りし、驚きでしかなかったプレーのコンセプトは、多くが今日のサッカーのベースとなっている。インテンシティやトランジションという概念が、まだ専門用語として存在していなかった時代に、それをピッチ上で具現して見せたのがオシムだった。

 その薫陶を強く受けたのが、オシムチルドレンと言われた当時のジェフの選手たちである。すでにみな現役を退き、あるものは指導者としてピッチに立ち、あるものはクラブ運営に関わっている。

 彼らの心の中で、オシムは今も生き続けている。だが、その実像は、現役時代に感じていたものとは同じではないだろう。とりわけ指導者となったものたちにとって、オシムと同じ側に立つことにより、初めて見えてきたことがあるハズである。

 ピッチを離れて18年が過ぎ、逝去して3年がたった今、教え子たちの目に映るオシムの姿はどんなものであるのか。彼の教え、残したものは、今日でもなお有効であるのか。ふたりのオシムチルドレン――浦和レッズユース監督の阿部勇樹と、ジェフユナイテッド千葉ヘッドコーチの坂本將貴に話を聞いた。ふたりが描くオシム像とは……。

全ての写真を見る -7枚-
特製トートバッグ付き!

「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by J.LEAGUE

0

0

0

この連載の記事を読む

もっと見る
関連
記事