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武尊34歳「結婚したから引退? むしろ逆」壮絶KO後に語った“川口葵さんへの感謝”「この人のおかげで今も闘えている」「病気で苦しんでいた時期も…」
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2025/11/22 17:02
激闘の2日後、会見でツーショットを披露した武尊と妻の川口葵さん
「あの頃の武尊が戻ってきた」激しい“壊し合い”
いずれにせよ、ロッタン戦に続いて今回のピューリック戦で敗れることになれば、およそ50戦のキャリアの中で初の連敗となるところだった。日本での勝利は実は4年半ぶりだったので、武尊は「本当にうれしかった」と涙の意味を打ち明けた。
「K-1にいた頃は10年無敗で勝つのが当たり前。(途中からは)勝ってもうれしくなかったけど、最近は『こんなに日本で勝てないのか』という感じだったので、試合後はいろいろな想いがこみ上げてしまいました」
試合内容も“往年の武尊が戻ってきた”と思わせるほど、激しいものだった。1ラウンド、武尊の右フックでピューリックは前のめりに倒れ込んだ。ラウンド終了間際には右ローキックによって相手に背中を向けさせるほどのダメージを負わせていた。
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白眉は2ラウンド、ピューリックにとどめを刺した連打だろう。左ハイを2発連続でヒットさせた刹那、右ストレートを連続して浴びせると、粘るピューリックは大きくよろめきながらケージ内で大の字になった。
相手の意識を失わせるほどの破壊力を秘めた攻撃でKOする。その姿はK-1時代にKOの山を築き上げていた武尊の姿と重なり合う。会見で武尊は「これこそ(現在所属している)VASILEUSスタイル」と胸を張った。
「ポイントで勝つのではなく、相手を壊す闘い。それがVASILEUSスタイルだと思っている。練習で(野杁)正明や(与座)優貴らメンバーで『これ、いいね。相手も倒れるね』と話し合いながら研究してきたスタイル。それを僕もだんだんと自分の中に落し込むことができるようになってきた」
もちろん倒す距離に自分の身を置くということは対戦相手の反撃を許すリスクを伴う。今回もピューリックのカウンターをもらい、場内が大きくどよめく場面があった。見るものの心を震わせる“肉を斬らせて骨を断つ”というスタイルは健在だった。
さらに武尊は1ラウンドに右フックで先制のダウンを奪った直後から手負いの状態で闘っていたことを打ち明けた。
「(右手の)親指にちょっとヒビが入ってしまいました。クロスで右フックを打ったとき、指一本だけで打ってしまったんですよ。以前コロナ禍の最中にタイ人と闘ったときも(2020年3月22日、ペッダム・ペットギャットペット戦)親指だけが当たって倒したことがあるけど、そのときもいっちゃいましたね。ここ(右手の指)に全部集中するのでパンチはめちゃくちゃ強くなるけど、自分が壊れてしまった」



