テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
カーショウ絶賛「効率的。今のヨシなら150球でも」山本由伸がブルージェイズ打線を制圧…“敵地ファンに神対応”大谷翔平から主役を奪った日
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byVaughn Ridley/Getty Images
posted2025/11/23 06:00
ワールドシリーズ第2戦で完投勝利を挙げた山本由伸。この日からWS主役の座を、大谷翔平から奪い始めた
結果は四球。ロジャーズ・センターは異様な雰囲気に包まれた。動揺があったのか、一塁走者になった大谷は初球直後のけん制球で帰塁が遅れ、あわや憤死で試合終了になるところだった。
なおこの大合唱について、ブルージェイズのシュナイダー監督は会見で大谷とファン両方に、こう理解を示した。
「(大合唱は)聞こえていた。大谷は特別な存在。ただ、我々のファンがチームに誇りを持っているのはうれしい」
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大谷が浴びたファンからの大合唱といえば、オフにFAを控えた2023年にマリナーズの本拠地Tモバイル・パークで開催された球宴で「Come to Seattle!(シアトルに来て!)」コールが話題になった。メッツ本拠地シティ・フィールドなどでも「We want Shohei!(我々は翔平が欲しい!)」の大合唱が巻き起こるなど、これまで全米で好意的なラブコールを受けていた。それだけに、取材者としてトロントの洗礼は初体験だった。
「ショーヘイ!」敵地ファンにボールを
大谷は前日会見で「それをまた力に変えていこうかなと思っている」とブーイングを受けることについてこう予見し、実際にWS初本塁打を放った。雑音を封じるには打つしかない。過去120回のWSで初戦黒星からの制覇は43回で約36%にとどまる。ただ、まだ1敗しただけ。“逆風”が吹けば吹くほど大谷はきっと燃えるはず。大谷の新たな姿が見られるのではないか――とひそかに期待した。
翌25日の第2戦。ロバーツ監督は試合前会見で、大谷が28日の第4戦でWS初先発することを公表した。相手は2020年サイ・ヤング賞右腕のシェーン・ビーバー。近年は故障などで本来の力が発揮できない年が続いているとはいえ、油断ならない相手だった。
大谷は3−1の8回1死一塁から、右腕ルイ・バーランドの低めのチェンジアップでバットを折りながらも右前打。一、二塁と広がった好機がダメ押しの2点につながった。
前夜の初戦に続き、初回の打席では「We don't need you(我々にあなたは必要ない)」の大合唱がまた起きた。ただ、試合前のキャッチボール中には敵地のファンも……。
「ショーヘイ! ショーヘイ!」
こう叫ぶと、大谷がボールをアピールしつつ、スタンドにボールを投げ込んで“神対応”する姿に歓声が巻き起こるなど、存在感はピカイチである。
安打の際には一塁手で仲のいいゲレーロと接触しヒヤリとする場面もあったが、大事には至らずお互いに笑い合った。
カーショウが絶賛した由伸の完投劇
そして、この日の主役は何と言っても山本だった。

