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「自分は陸上しかないんで」出雲で“号泣”の駒澤大エース候補が選考レースで復活! 箱根駅伝へ監督は「ラインナップは不安なし。最大のライバルは…」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byTakashi Shimizu
posted2025/11/19 06:00
駒澤大の次世代エースと目される2年生、桑田駿介。出雲駅伝の失速から上尾ハーフで復調を見せ、学生2位の好結果を出した
これまで2度、5区を駆けてきた山川を今回も5区のままでいくのか、それとも2区に回すのか。その場合は、坂口雄哉(2年)や牟田颯太(1年)ら、5区希望の下級生の誰かに任せることになるのか。
藤田監督は「難しい」と厳しい表情で言う。
「工藤(慎作・早稲田大)君や、もし黒田君が5区に入ると、68分台を一つの指標にしてくると思うんです。そうなると70分台で走っても1分半ぐらいやられる計算になりますから、そこをどうとらえるかですね。うちはそこで山川で凌ぐのか、それとも新しい戦略で行くのかを考えないといけない。
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ただ、復路に関しては戦力をかなり残せるので、そういう意味では捕まえにいくことができるし、攻めていくことができますが、そのためのデッドラインが1分30秒。そのくらいの差で往路を終えられれば、復路は勝てるオーダーが組めるんじゃないかなと思います」
箱根でキーになる選手とは?
この読みを踏まえると、今回の箱根でキーになる選手は、おそらく伊藤蒼唯(4年)だろう。
全日本では5区で襷を受けたとき4位で、トップの中央大とは35秒差があった。だが、伊藤はその35秒の借金を返し、52秒の貯金を作った。トータルで87秒を稼いだことになり、相手次第ではあるが、藤田監督がいう1分30秒の借金なら返済できる可能性が十分にある。
7区や8区で伊藤がケタ違いの走りを見せれば、逆転はもちろん、うしろにつづく選手に安心感を与え、勇気づけることもできる。かつて青学大が91回~94回で箱根4連覇を達成したうちの3回は、復路の8区に下田裕太を置いて、盤石の駅伝を見せた。
伊藤自身は「5区以外はどこでも走れる」と語っている。彼のようにどこでも走れる主力選手がつなぎ区間を担当するメリットは非常に大きく、伊藤の区間配置が今回の駒澤大の戦略の核になるだろう。
「箱根は、総力戦で行きたいと思っています」
藤田監督は、手応えを確信した表情でそう言った。
上尾で大きな収穫を得て、必要なメンバーは揃った。このままアクシデントがなければ、箱根はイケる。そう思わせてくれるほど、今の駒澤大は自信に満ち、戦力、気力ともに充実している。

