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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「自分の幽霊を見せたい」那須川天心が明かす意味深発言の意図「毎日ギリギリで生きているから」…井上拓真との対戦は「面白くなるって感じしかない」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/11/15 11:02
井上拓真とのWBC世界バンタム級王座決定戦を前にその心境を明かした那須川天心
「対戦が決まってから、凄く注目してもらっているのでテンションは間違いなく上がっています。絶対に勝つというあのコメントも、僕に対して興味があるからだと思うんですよ。絶対に負けられないぞ、というのも伝わってくるし(試合が)面白くなるなっていう感じしかしないですね」
那須川はキックから無敗を続けている言わば負けない男だ。
「毎日ギリギリで生きているから」
その真骨頂と言えるのが今年2月、元WBO王者ジェーソン・モロニーとの一戦だった。1ラウンドに右ショートを浴びて効かされ、6ラウンドにはワンツーをもろに食らって尻もちしそうなところを何とか踏ん張った。モロニーのパワーをスピードで封じつつ、主導権を握っていたのは間違いない。終盤はヒット&アウェーに徹するかと思いきや、逆に打ち合いに臨んだ。そうしたほうが勝ちにつながるはずだという天性の勝負勘が働いた。
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「そういう判断力も、毎日ギリギリで生きているからだと思うんです。練習していても納得できる日なんてないですからね。そのなかで判断を早くしていくというのはあります。うまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。まあどっちに転んでも面白いっていうのが僕のなかにはある。どうにもならない状況だって結構好きなので」
うまくいかなくとも、それを面白がることができるから突破口を探り出せる。直近のビクトル・サンティリャン戦(6月8日)ではスピードとフットワークを活かしながら攻防一体のスタイルに磨きを掛けてきたことは一目瞭然。詰め切る、倒し切るところはうまくいかなかったにせよ、マイナス面に引っ張られないから隙を与えなかった。ショートレンジでのコンパクトなパンチも有効だった。モロニー戦より明らかに成長していた。
「実は(サンティリャン戦に向けた)スパーリングはメチャメチャうまくいっていたんです。だからウチのチームからしたら“もっとうまくできるのに、どうしてそれしか出せないんだ”となっていて。見ている人からすればそこの過程は目にしていないので“レベルが上がった”と言ってもらえるんですけど、自分のなかではそのギャップがありましたね」
「何事も基本が大事」
ボクサーらしいボクサーになってきた。体つきも逆三角形体型に近づき、ジャブ、ワンツーを軸に、ディフェンスワークもレベルを上げてきた。モロニー戦、サンティリャン戦を見ても世界ランカー相手にスタミナ面もまったく問題ない。意外性あっての那須川ではあるが、先にそれがあるわけではない。

