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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「自分の幽霊を見せたい」那須川天心が明かす意味深発言の意図「毎日ギリギリで生きているから」…井上拓真との対戦は「面白くなるって感じしかない」
posted2025/11/15 11:02
井上拓真とのWBC世界バンタム級王座決定戦を前にその心境を明かした那須川天心
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
「幽霊を見せたい」発言の意図
しっかり自分の幽霊を見せたい――。
世界戦6度のキャリアを誇る元世界王者・井上拓真(大橋)とのWBC世界バンタム級王座決定戦(11月24日、トヨタアリーナ東京)が発表された記者会見の席。デビュー8戦目で世界に挑む那須川天心(帝拳)はもう試合は始まっていると言わんばかりに意味深な言葉を投げかけ、多くのメディアに取り上げられた。写真撮影でも幽霊ポーズでカメラに収まっている。
インタビューではその意図から聞くことにした。
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「(試合において)今までは結構、相手に反応させることが多かったんですよ。フェイントでびっくりさせるとか、でも(裏を返せば)それって反応できるってこと。姿、形は見えるし、来るって思うから。でも幽霊なら見えない。反応させないで、えっこれ何が起きてんの?みたいな状況をつくるというのがきゅっとまとめた自分の幽霊。ただ(意図としては)それだけじゃない。試合が終わってから言おうと思っています」
那須川はそう言って茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。
アドリブで言い放ったものではない。取り入れている呼吸法のトレーニング先でこの話になり、日記にも書いている。今回のテーマとして用意していた自分のスクリプト(台本)。駆け引きの意図もあるとはいえ、会見の場ひとつとっても「戦いの場」にしている彼ならではの“先制パンチ”であった。
「テンションは間違いなく上がっています」
キックの神童がボクシングでデビューして2年半の天心と、幼少のころからボクシング一筋でアマチュアにおいてもプロにおいても実績を残してきた拓真ではボクシングキャリアにおいては差がある。兄の井上尚弥が「絶対に勝つからやらせてください」と弟の意思を後押ししたエピソードも会見の席で披露された。ただ那須川は過去7戦のうち4試合が世界ランカーとの対戦であり、KO率こそ少なくともしっかりとこの世界にアジャストして急成長ぶりを示しているのも事実である。経験なら拓真、勢いなら天心。ゆえにどちらにはっきりとアドバンテージがあるとは言い難い。


