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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ドジャース山本由伸、日本人初サイ・ヤング賞は厳しそうだが…身長178cmでも198cmライバルを上回る「3つの指標」“沢村賞と両獲り”への課題は
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/11/12 11:01
サイ・ヤング賞受賞こそやや難しそうとはいえ、山本由伸が2人のライバルを上回る指標とは
サンチェス(フィリーズ)
28歳 rWAR8.0 fWAR6.4
32試13勝5敗 202回12被本
44四212振 率2.50(3位)
スキーンズ(パイレーツ)
23歳 rWAR7.7 fWAR6.5
32試10勝10敗 187.2回11被本
42四216振 率1.97(1位)
山本由伸(ドジャース)
27歳 rWAR4.9 fWAR5.0
30試12勝8敗 173.2回14被本
59四201振 率2.49(2位)
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いずれも好成績だが、サンチェスのrWARは8.0と、大谷翔平の野手としてのrWAR6.6を上回っている。以前ならサンチェスはサイ・ヤング賞だけでなく、MVPの有力候補だったはずだ。
今のMLBで最も重視されるのはWARだが、この指標は「積み上げ型」で、より多くの試合に出場し、多くのイニング数を投げた選手が高数値になる傾向にある。サンチェスはリーグ2位の202イニングを投げたことでWARが高くなっている。
また昨年の新人王のスキーンズは2年連続で防御率が1点台、今年は1位だった。セイバーメトリクス的には防御率は偶然の要素が多いとして重視されないが、野球が「1点でも多くの点を取り、1点でも失点を少なくする」競技であることを考えれば、防御率が1位であるのは、依然大きいポイントと言える。
サンチェス、スキーンズより優秀な指標とは
率直に言って山本は2人に比べると、rWAR4.9はナ・リーグ7位、fWAR5.0は5位ということもあり、数字的には見劣りする。しかし子細に見ていくと、彼の優秀さを示す指標がある。
【被打率】
サンチェス .227(6位)
スキーンズ .199(4位)
山本由伸 .183(1位)
山本はナ・リーグの規定投球回数以上の投手の中で、最も被打率が低い。失投が少なく、打者に安打を許さなかったことがわかる。
【被長打率】
サンチェス .321(3位)
スキーンズ .307(2位)
山本由伸 .283(1位)
長打を許した率も、ナ・リーグで唯一2割台だった。NPBよりもはるかに長打が出やすいMLBで山本がいかに安定感のある投球をしていたかがわかる。
【奪三振率】※SO9 =9イニング当たりの奪三振数
サンチェス 9.45(8位)
スキーンズ 10.36(5位)
山本由伸 10.42(2位)
パワーピッチャーの指標である奪三振率、9以上あればイニング数を上回る三振を奪っていることになる。身長178cmの山本が、ともに198cmのサンチェス、スキーンズより奪三振率が高いのは壮観だと言える。
岩隈、マエケン、ダルが2位になったことも
これまで、日本人投手がサイ・ヤング賞のファイナリスト(3位以内)に入ったのは3人で通算4回。どんな面々だったか。

