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巨人・桑田真澄二軍監督「電撃退任のナゼ」圧倒的大差でファーム優勝したのに…阿部慎之助監督との育成方針の違いは? 露呈した「絶対的な練習不足」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/11/08 17:02
日本シリーズ中の10月28日に電撃的に巨人退団を発表した桑田真澄二軍監督。その背景には何があったのか…
こうした育成に対する問題が報告として上がり、桑田監督の退任を最終的に決めたのは山口寿一オーナーだったと聞く。山口オーナーは21年に桑田監督が一軍チーフ投手コーチ補佐としての巨人復帰した際や今回の二軍監督の就任にも主導的な役割を果たしてきた。それだけに今回の決定は、オーナー自身にもかなり重い決断だったことが推察できる。
退任にあたって桑田二軍監督は「一軍が優勝することができず、若手の育成が思うように進んでいない責任を取り、退団を決断しました」とスポーツ報知に寄せたメッセージで語っていた。山口オーナーの決断を知り、球団からは国際部への転出の打診もあったが、「ケジメ」をつける形で退団を選択したということだろう。
一軍と二軍で選手の育成概念に隔たりがあったことが根本的な問題だった。若手選手の育成には追い込むくらいの練習量をこなさせて、技術と体力を上げていく「量と質」の両方が必要と考える阿部監督。「量より質」を重視して選手の自主性を重んじる桑田監督。一軍監督と異なる二軍の育成方針が生まれてしまったことが、一番の問題だったのである。
桑田監督の後任に石井琢朗監督
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ジャイアンツタウンスタジアムなどで始まった秋季キャンプ。阿部監督はスタートにあたって「他のチームも練習していることですから、そこに負けないように。全体練習以外の練習もたくさんやって欲しい」と訓示した。そして桑田監督の後任に阿部監督が指名したのが、今年までDeNAの野手コーチをしていた石井琢朗二軍新監督だった。石井新監督は広島、ヤクルト、巨人などでもコーチを歴任し、厳しい指導で知られ、選手に「量と質」の練習を求める指導者である。
「巨人軍だけに『強人軍』でありたい。僕の中で求めているのは個々の強さ。振る強さ、打球の強さ、球際の強さ、精神的な強さも踏まえて、強い選手を育成したい」
11月4日に秋季キャンプを訪れた新二軍監督は、新しい育成の方針をこう語っている。
一軍のために二軍はあり、二軍が“独立王国”になってしまっては決してチームは機能しない。
ヘッドコーチを置かずに一、二、三軍の監督が情報を共有しながら、一軍の勝利のために動く。新しい指導体制を組んで3年目の阿部巨人がスタートを切った。


