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巨人・桑田真澄二軍監督「電撃退任のナゼ」圧倒的大差でファーム優勝したのに…阿部慎之助監督との育成方針の違いは? 露呈した「絶対的な練習不足」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/11/08 17:02
日本シリーズ中の10月28日に電撃的に巨人退団を発表した桑田真澄二軍監督。その背景には何があったのか…
桑田監督は一昨年オフの就任以来、「量より質」の練習方針を掲げて、二軍の全体練習時間はかなり短くなっていた。足りない分は選手の自主練習やミーティングなどの座学に時間を割いて、コーチが強制的にグラウンドで居残り練習をさせることなども減ってしまっていた。選手を追い込むような過度の練習は、肉体的な負担が大きくなり集中力も持続できないのでケガや故障のリスクを高めることもあるだろう。ある意味正論かもしれない。
巨人のファーム「絶対的な練習不足」
一方で巨人のファームには絶対的な練習量不足が起こっているという指摘があったのも事実だ。
もともとキャンプ等でも巨人は練習量が少ない、という指摘をよく耳にする。最近はコンディションを優先して、ケガを回避しながらしっかり選手を育成するというのがプロ野球でも主流になりつつある。一例で言えばかつてはやってやってやりまくるような練習で選手の育成に成功してきたソフトバンクも、最近はかなり練習量を抑えた指導になっているという。
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しかしソフトバンクから今シーズン中に移籍してきたリチャード内野手が、巨人の二軍のあまりの練習量の少なさに驚いていた、という話を聞いた。シーズン中に坂本勇人内野手がファーム調整となったときに、グラウンドに最初に来て、最後に帰るのがこの36歳のベテランだったと伝わってもいる。
それでは練習の質は上がっているのか、だ。
練習も早く終わり、自主性に任せているから桑田監督の指導方法は選手の評判もいいし、スタッフの受けも良かった。ただ一番の問題は、ファームで好成績を残した選手が一軍に上がってきても一軍の投手に太刀打ちできるだけのスイングの力強さ、守備の基本的な動きができていない。投手ならいい球を持っているのに、それを持続する技術と継続性がない。
期待された井上温大、堀田賢慎両投手や、打者でもケガもあったが浅野翔吾外野手も伸び悩んでいる。森田駿哉、又木鉄平らの投手陣に野手でも荒巻悠、三塚琉生ら……二軍で結果を残した若手が一軍に上がってきては、すぐに二軍へとUターンする日々も続いた。泉口友汰内野手や佐々木俊輔外野手のように一軍のレギュラーを掴んだり、掴みかけている若手もいる。そういう選手は才能も高い上に、高校卒業後の3、4年間を大学、社会人で過ごして、それなりに追い込んで鍛えられてきた経験がある。
二軍の選手は試合で自分の課題を見つけて、それを克服していくための練習が絶対的に必要だ。鉄は熱いうちに打たなければならない。しかし巨人の二軍には打つべき絶対的な練習量が足りなかった。その結果、何より若い選手に一軍で戦い抜く体力がなかった。
それが巨人のファームの現実だった。
山口オーナーの「重い決断」
優勝した阪神の二軍では、試合後にコーチが選手を引っ張り出して居残り特打や居残り特守を当たり前に行なっているという。このままではどんどん差が開いてしまう。その危機感が最大の問題点として指摘されていたのである。

