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ドラフトウラ話《西武育成6位指名》最速153キロ、デッドリフトは240kg…でも所属は3部リーグ “偏差値70超”「名門大の帰国子女」はなぜプロの道へ?
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別府響Hibiki Beppu
photograph byAsami Enomoto
posted2025/10/29 11:01
西武から育成6位指名を受けた正木悠馬。高校時代をアメリカで過ごし、本格的に投手をはじめたのは大学からという変わり種だ
そして、もうひとつ正木の中で進化を求める大きな理由があった。
「自分の中で『自分の身体能力を活かしきれてないな』という感覚がずっとあって、それがすごく大きいです。野球というスポーツはまずは体の使い方が重要で、その使い方が良くなってはじめてフィジカルの勝負になってくると思うんです。でも自分の中で、身体の使い方がうまくハマったという感覚が全くなくて。『もっと活かせるはずなのにな……』と思いながら、ずっとやってきた感じでした」
現在の正木は179cm、83kgの体躯で、デッドリフトは実に240kgをあげる。
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しかもその数値も通うジムのトレーナーに「これ以上はやらなくていいよ」と止められたためで、天井はまだまだ上にある。
そんな高いフィジカル能力を「活かしきれていない」感覚があるのだという。それは直球が153キロを記録した現在でも変わっていない。つまり、裏を返せばまだまだ伸びしろしかないということの証左でもある。
一方で、さすがにこのレベルまでくると自己流の限界も感じてきたという。
「動画を見るだけだとどうしても受け身になるというか、情報を自分から探しにいかないといけない。逆に専門の方から指導してもらえるというのが初めての環境なので、そこはプロに入ってとても楽しみにしています」
それにしても、である。
専門的な指導を受けた経験はなく、所属は非強豪校。練習環境も決して恵まれているわけではない。それだけのマイナス要素がありながら、最後まで「育成でも構わない」とプロを目指し続けた正木のメンタリティは特筆に値する。
名門大の肩書きに加え、帰国子女で語学も堪能という背景も考えれば、恵まれた選択肢があっただろう。マイナーとはいえMLBの球団からも熱心な誘いがあったという。その中ではあえて「最も厳しい道」を選んだようにすら見える。
ブレなかったのは…「自分を信じること」
「プロ一本でいく」と決めたこの1年間は、きっと周囲も、自身ですらも懐疑的な目で己の選択を省みた瞬間もあっただろうことは想像に難くない。それでも当初の意思を貫徹できた理由はどこにあったのだろうか。
「月並みですけど、“自分を信じること”だと思います。自分ももちろんうまくいかないこともあったし、環境的に難しい部分もありました。でも、どこかで『自分はもっとできるはず』という確かな想いがあった。
多分、自分を信じて頑張れないなら、たとえ環境が整っていてもうまくいかないと思うんです。だから唯一、そこだけはぶらさずやってきました。それがちょっとずつですけど、結果に繋がったのかな……とは思います」
異色のバックボーンを携えてプロへと向かう22歳。
伸びしろだらけの国際派ピッチャーは、果たしてどんな覚醒を見せてくれるのだろうか。

