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藤浪晋太郎が告白「阪神時代、ストレスで自律神経失調症のようになった」阪神5年目の異変“ストライクが入らなくなる”苦悩「歯がボロボロと崩れる夢を…」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2025/10/23 11:07

藤浪晋太郎が告白「阪神時代、ストレスで自律神経失調症のようになった」阪神5年目の異変“ストライクが入らなくなる”苦悩「歯がボロボロと崩れる夢を…」<Number Web> photograph by NumberWeb

今年2月末、キャンプ地のアリゾナで取材に応じた藤浪晋太郎(当時マリナーズ)

 藁にもすがる思いで、その頃、いろいろなものを試した。目を調べ、歯を調べ、脳波も調べてもらった。メンタルクリニックや整体にも通った。だが、どこへ行っても異常は見つからなかったし、何の解決策も与えてくれなかった。

元同僚・北條史也の証言

 勝てなくなってからの藤浪が降板するパターンは決まっていた。突如、ストライクが入らなくなり、四球を連発してしまう。あるいは、デッドボールを与える。結果、打者の打ちやすいゾーンにボールが集まってしまい、痛打された。

 その様子を間近で見ていたのは、2012年のドラフト会議で藤浪に次ぐ2位で阪神から指名を受けた内野手の北條史也である。北條と藤浪はともに大阪の南部エリアで生まれ育った仲でもあった。

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「1球(ボールが)抜けるとヤバいってなって、余計にまた抜けるんですよ。何勝もしているときも抜け球ってあったと思うんです。でも、いいときは気にせず次の球はドーンっていけた。その違いだと思うんです。ヤバいってなったときの藤浪は丸わかりなんです。マウンドに集まると『ぴよぴよ』ってなってるんで。『ごめん、ごめん』みたいな。ああ、メンタルに来てるんだな、って」

「イップスなのか?」本人の見解

 藤浪はイップスなのか否か――。

 この頃、藤浪のコントロールの悪さは一種の病のように捉えられ、業界内では何度となくそんな議論が交わされた。

 イップスとはごく簡単に説明すると、ゴルファーが30センチほどの短い距離のパットを目の前にすると体が硬直してしまうなど、これまで何も考えずにできたような単純な動作が突然、できなくなる症状のことだ。投手なら捕手に投げたつもりが、足下にボールを叩き付けていたという事例もある。

 ただし、おそらく藤浪がイップスかどうかという疑問に正確に答えられる人はこの世に一人もいない。誤解されがちだがイップスは病名ではなく、あくまで症状を指す言葉だ。したがって、そもそも「あなたは骨折している」とか「あなたはガンだ」と確定診断できる種類のものではないのだ。

 私自身、野球をやっていたときに短い距離のスローイングに恐怖心を抱くようになってしまった経験があったため、記者になってから、何度となくイップスの取材をし、何度となく記事を書いてきた。競技も野球だけでなく、ゴルフ、卓球、ボウリング、ダーツまで広げ、指がうまく動かせなくなったというギタリストに話を聞いたこともある。また、何人もの医師や研究者に当たった。

【次ページ】 「阪神で本当は何があったのか?」

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