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野球クロスロードBACK NUMBER
「最終的にどれだけ稼げたかが選手の価値」異例の“ドラフト10位指名”が下剋上…支配下「12球団最後の指名」→28歳でオールスター選出の波乱万丈
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/10/16 11:04
2016年のドラフトでは支配下選手として12球団最終指名だった西口直人。今季はオールスターや侍ジャパン抜擢など飛躍の年になった
上昇気流に乗ろうとしていた23年。右ひじの痛みを抱えながらマウンドに立ち、シーズン終盤に側副靱帯を再建するトミー・ジョン手術を決断した。そのことで実戦復帰まで1年以上の期間を要することから、西口は育成選手として再契約となった。
キャリアの停滞に直面してもなお、彼は手術やリハビリをアップデートの材料と捉えた。
「『このまま投げていても、いい結果を出せないだろうな』と思っていましたし、ひじの不安さえ改善できればもっと投げられる自信があったんで、前向きでしたね」
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一軍のマウンドに復帰するまでのおよそ1年半の間、西口は自分と向き合った。
今の自分があるのは――そう自問する。これまで、多くの変化球を自分のものにすることで成り上がれたのは間違いない。だが、それらを活かせたのは己が最も信頼し、自信を持つストレートがあったからだ。
西口は原点に立ち返った。
ストレートをもう一度、鍛える。ピッチングフォームから洗い直す過程で「これだ」と思えた瞬間があった。
「進化のヒント」になった和田毅の思考
西口が言うには、体の中にもうひとりの自分――「リトル西口」を宿すこと。これは、元ソフトバンクの和田毅の発想からヒントを得たのだという。
「人づてに聞いたことなんですけど、和田さんの『自分の中でちっちゃい人間が投げているイメージを持っている』っていう感覚がすごくわかりやすくて。体の中にいる、思い描く理想の小さい自分と同じように投げることで、フォームも安定した部分はありますね」
今シーズン、一軍マウンドに帰ってきた西口のストレートは明らかに変わった。150キロをコンスタントに超えてくるボールは、力強さを損なわずに内角、外角のギリギリのコースを突けるようになった。

