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「最終的にどれだけ稼げたかが選手の価値」異例の“ドラフト10位指名”が下剋上…支配下「12球団最後の指名」→28歳でオールスター選出の波乱万丈
posted2025/10/16 11:04
2016年のドラフトでは支配下選手として12球団最終指名だった西口直人。今季はオールスターや侍ジャパン抜擢など飛躍の年になった
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
今季、オールスターに初選出され、秋には侍ジャパンにも選ばれた28歳の右腕。球界を代表するリリーフとなった男は、いまから9年前のドラフトではまさかの「10位指名」だった過去を持つ。支配下選手では全球団でその年の最後の指名だった「意外性の投手」は、果たしていかにして下剋上を果たしたのか。その秘密を聞いた。《NumberWebインタビュー全2回の2回目/最初から読む》
2016年のドラフト会議。
甲賀健康医療専門学校(現:ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校)の西口直人は、支配下選手では最後となる全体の87番目に名前を呼ばれ、10位で楽天に入団した。
「最終的にどれだけ稼げたか」が重要
「忍者発祥の地」と呼ばれる甲賀の里がある甲賀市の専門学校を出たことで、ストレートに並ぶ武器でもあった縦に鋭く曲がるカーブは「手裏剣カーブ」と名付けられた。加えて「ドラ10」の出自といった話題性ばかりが注目されていた西口は当時、静かに闘志を燃やしていたものである。
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「プロになったときから、同級生や同期入団の選手には『負けるわけにはいかない』っていう気持ちというか。最終的に何歳までプレーできたか、どれだけ稼げたかが野球選手の価値だと思っているんで、ここから成長していいピッチャーになっていきたいです」
ドラフトで最下位指名ながら、1年目のシーズン序盤には一軍の練習に呼ばれた。能力を買われていた西口がプロ初登板を果たしたのは、2年目の18年である。
9月30日のオリックス戦でプロ初登板初先発のマウンドに立った西口は、「試合前は吐きそうなくらい緊張していた」という精神状態を感じさせないピッチングで観衆を沸かせる。7回2/3を投げ5安打、2失点。勝敗こそつかなかったが、上々のデビュー戦だった。

