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藤井聡太vs伊藤匠23歳の“八冠独占”同学年対決…なぜカド番でも大棋士は強いか「藤井さんは勝負の結果や流れを」永瀬拓矢の興味深い証言
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2025/10/16 17:38
藤井聡太と伊藤匠。八大タイトルを分け合う23歳の2人の、1年間の歩みとは
藤井は6筋にと金を作り、角を6四に打って後手玉に利かした。伊藤は敵陣の8九に飛車が侵入して先手玉に迫った。まだ難しい形勢と思われたが、藤井が寄せ合いにいかず、自玉を安全にしたのが好判断だった。
藤井は直線と曲線を使い分け、最後は6四の馬の利きを生かして寄せ切った。
王座戦第4局は藤井王座が99手で勝った。終局時間は20時3分。伊藤叡王は1分将棋の秒読みまで頑張ったが、挽回は成らなかった。
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藤井七冠とタイトル戦で何回も対戦している永瀬九段は、「藤井さんは勝負の結果や流れを気にしていません。一局ごとに集中しています」と語った。確かに対局が放送された藤井の様子からは、カド番に立って追い詰められた感じはみじんもなかった。まさに「平常心」そのものだった。
過去の大棋士はカド番にどれだけ強かったのか
タイトルを数多く獲得した超一流棋士が、カド番から巻き返した過去の例を調べてみた。七番勝負で2勝(1勝)3敗から逆転勝利、五番勝負で1勝(0勝)2敗から逆転勝利は次の通り。
羽生九段(獲得タイトルは99期)は17回、大山康晴十五世名人(同80期)は8回、中原誠十六世名人(同64期=78)は6回あった。崖っぷちに追い込まれても、そこから立ち直れるのが真の強者といえる。
羽生は中でも王座戦で圧倒的に強かった。タイトル獲得は最多の24期。そのうち3連勝は13期で、7期にわたって19連勝した。カド番からの勝利は5期あった。
藤井七冠のカド番対局は2局だが、今後は難敵との対戦で増えるかもしれない。
王座戦第5局は10月28日に山梨県甲府市「常盤ホテル」で行われる。伊藤新叡王が誕生した昨年の叡王戦第5局と同じ対局場である。藤井が七冠を保持するか、伊藤が二冠を獲得するか、大勝負に注目したい。

