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藤井聡太vs伊藤匠23歳の“八冠独占”同学年対決…なぜカド番でも大棋士は強いか「藤井さんは勝負の結果や流れを」永瀬拓矢の興味深い証言
posted2025/10/16 17:38
藤井聡太と伊藤匠。八大タイトルを分け合う23歳の2人の、1年間の歩みとは
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
日本将棋連盟
藤井聡太王座(23=竜王・名人・王位・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)に伊藤匠叡王(23)が挑戦している第73期王座戦五番勝負。藤井は1勝2敗でカド番に立った10月7日の第4局に勝ち、2勝2敗の五分に戻した。これは昨年の第9期叡王戦(藤井叡王−伊藤七段)五番勝負と同じ展開である。藤井はその第5局で敗れてタイトルを初めて失ったが、今年の王座戦はどんな結末になるだろうか……。八大タイトルを分け合う2人の1年間における活躍、今期王座戦の激闘などについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書はいずれも当時。初出以外は省略】
藤井八冠独占が崩れた叡王戦から1年
藤井叡王に伊藤七段が挑戦した昨年の第9期叡王戦五番勝負は2勝2敗の五分となり、第5局は6月20日に山梨県甲府市「常盤ホテル」で行われた。そして伊藤が激闘を制して勝ち、初タイトルの叡王を獲得した。タイトル戦で負けなしの22連覇をしていた藤井は、タイトルを初めて失った。両対局者は終局後に次のように語った。
藤井七冠「タイトル戦で敗れるのは、時間の問題と思っていました。あまり気にせず今後も頑張りたい」
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伊藤新叡王「ひとつ結果を出せて良かったという気持ちです。今後も藤井さんとタイトル戦で戦えるように頑張りたい」
あの叡王戦から1年あまりたった。
藤井は竜王戦、名人戦などのタイトル戦で防衛を続け、七冠を保持している。伊藤は前期順位戦でB級1組に昇級し、名人戦挑戦の可能性があるA級を目指している。斎藤慎太郎八段(32)の挑戦を受けた第10期叡王戦では、激闘の末に3勝2敗で初防衛を果たした。
藤井が通算2度目のカド番に追い込まれた
タイトルは防衛してこそ一人前だという。伊藤叡王にとって、叡王戦の勝利は大きな自信になったと思う。ある関係者は「覚醒した感じ」と印象を語った。実際に6月から8月にかけて12勝1敗だった。そして王座戦で永瀬拓矢九段(33)、羽生善治九段(55)らを連破し、藤井王座への挑戦権を得た。両者の対局は昨年6月の叡王戦以来で、伊藤がそのときに語ったことが実現した。
王座戦第3局までを簡単に振り返っていこう。※持ち時間は各5時間

