テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「オオタニは偉大な才能だけど…」“元二刀流の161キロ”の闘志をドジャース大谷翔平は打ち砕いた「しっかりと良いスイング」珍しく自賛した日
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNicole Vasquez/Getty Images
posted2025/10/08 11:02
始まったドジャースと大谷翔平のポストシーズン。テレビに映らない舞台裏はどうなっているか
午後6時。24時間後に迫った決戦を前に、大谷がドジャースタジアムのグラウンドに姿を現した。初めて二刀流で臨むポストシーズンへ、遠投やキャッチボールで汗を流した。
2戦先勝のWCS。ナ・リーグ中地区3位レッズには今季5勝1敗と勝ち越したが、大谷は25打数3安打、打率.120、0本塁打、3打点。対ナ・リーグ球団の打率で最も低く、本塁打もない。
敵将テリー・フランコナ監督の前日会見。珍しく大谷の話題が出なかったので、私は意を決して「大谷封じの鍵」を質問した。すると、フランコナ監督は「教えられないよ。教えたら本人に伝えに行くだろう?」と一笑に付し、「フルスイングさせてはいけない。ミスすれば物凄く遠くまで飛ばされる」と警戒。1勝1敗で第3戦までもつれれば「投手・大谷」が登板することも公表され「脚(走力)でも腕(投手)でも相手を打ち負かせられる。最高の選手、世代を代表する選手」と賛辞の言葉を並べた。
161キロ超の剛腕が語る「彼は偉大な才能だけど」
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相手の初戦先発は100マイル(約161キロ)超の速球を連発する26歳の剛腕ハンター・グリーン。グリーンにも、通算7打数1安打、ノーアーチと抑えている大谷について同じ質問を投げかけた。
「彼は偉大な才能だけど、僕もメジャーリーガー。自分を信じて、一球一球を全力で投げきる」
メジャー入団当初は遊撃手兼投手で話題を集めた元二刀流のグリーンの闘志に少したじろいだ。赤い壁をぶち破れるか。ワールドシリーズ連覇への第一関門に向け、私自身も身が引き締まる思いだった。
球速161.6キロ→打球速度189.4キロで仕留める衝撃
30日の初戦。日本では日本シリーズなどのポストシーズン、開幕戦、オールスター戦では、報道陣は正装する“暗黙の了解”があり、やはり日本の報道陣の中にも数人、ジャケット姿の記者がいた。私は襟付きの白シャツこそ着用していたが、ジャケットはそもそも日本から持参しておらず、いつものようにスニーカーを履いていた。これでいいのだろうか。少なくともいつもTシャツやジーンズの球団広報もこの日ばかりはスーツ姿だった。誰に何を指摘されるわけではないが、初心を忘れず、来年こそジャケットを持参しようと思った。
試合前から球場全体に独特の緊張感や盛り上がりがあふれ出ていたが、大谷はいつも通りだった。試合前にブルペンに入り、捕手を座らせて変化球を交え20球。初めて二刀流で迎えるPSがいよいよ始まるのだ。
ファーストスイングだった。

