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「正直、野球をできるメンタルではなかった…」DeNA蝦名達夫28歳が悲劇を乗り越えて1番に定着した“覚悟”「恩返しのためにも日本一連覇を」
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石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/10/06 11:01
後半戦でトップバッターに定着し、打率.284、8本塁打、41打点とすべてキャリアハイの成績を残した蝦名の「分岐点」になった悲劇とは……
常に頭のなかにあるバッティングの肝は、“打つポイント”“タイミング”“バットを振る力”。この3つが円環を成し、選球眼と長打力に長けたバッティングが生まれる。
「8割の力でスイングする」
「とくに8割の力でスイングすること。この感覚はすごく大事だと思っています。変化があるとすれば重心を少し下げたぐらいで、他のところはこれまでやってきたことを継続しているだけですね」
好調の要因はあくまでも積み重ねだと蝦名は強調する。とくに指導者から変化を促すアドバイスを受けることもなく、体にじっくりと染み込んだものが発露しているのだと。
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では第三者の目からはどうだろうか。これまで蝦名を指導してきた石井琢朗野手コーチには、明らかな変化が見て取れるという。ただ今季の石井コーチはファームでの指導が主であり、一歩引いた立場で次のように語る。
「調子がよくなったタイミングで打席の立ち方が変わりましたね。今はスッと真っすぐに立っている。シーズン前半は肩が入って(投手から)背中がちょっと見えるぐらいの入り方をしていて、ストライクゾーンがボール1個分ぐらい外でした。それで結構アウトコースのボールに手を出していた印象です。ただ今の立ち方になってゾーンが普通になってボールの見極めもできるようになったと感じますね」
石井コーチはあくまで憶測との前提でタイミングについても言及した。
「元々はポイントが近い選手なので、インコースを窮屈そうにさばいていたんですけど、それが今はなくなって、言い方を変えればポイントが前になって“払い打ち”ができるようになっている。インコースをさばけるようになってからは、打席でも余裕が見えるようになりましたね。また速いボールに対して手こずることがあったのですが、立ち方の影響か、今はそこも改善されてきています」
鈴木誠也の助言とは
たしかに今季後半の蝦名は、石井コーチが言うように前のポイントで長打を打っている場面が目立っている。そこで思い出したのが、過去2年、自主トレをともにしているシカゴ・カブスの鈴木誠也からのアドバイスだ。蝦名は鈴木から長打を打つために「左足の前で打て」、つまり前のポイントでボールを捉えろと助言されている。

