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「ふふふ」永瀬拓矢が藤井聡太に敗戦後、電話口で本音…なぜ“AI期待勝率の急落”に興味がないか「この手を難しいと思えるのは将棋界に5人も」
posted2025/09/27 11:03
王位戦終了直後、再び永瀬拓矢が藤井聡太に挑み、将棋の研鑽に励む日々を語り尽くしてくれた
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Shintaro Okawa
「もしもしー」永瀬の明るい声が
「打ち上げには来ないんですか?」
永瀬からのメールにはそう記されていた。さらに「主催の方からは(筆者が参加する)許可をいただきましたよ」と立て続けにメールが届いた。
私は王位戦で新聞観戦記を書いている。今期は第3局の新千歳空港対局を担当し、2人の戦いぶりを間近で観戦した。とはいえこの第6局は関係ない立場だし、打ち上げは対局者と関係者の懇親の場で、私が永瀬に話を聞くためにあるわけではない。永瀬と許可をくれた主催社の厚意に感謝をしながら丁重に断った。結果、打ち上げが終わって永瀬が話をできるタイミングになったらメールをくれることになった。
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モバイル中継を何度も見返し、永瀬に聞きたいことをメモしていく。今日はどんな話が聞けるのだろう。
日付が変わった頃、永瀬からメールがきた。電話のタイミングを尋ねると、タクシーの中でも構わないかという。ありがたい。
両対局者は対局前日から都内のホテルに宿泊しており、合計で3泊する。この日も宿泊できるが、都内在住の永瀬は帰宅すると決めたという。電話をすると、「もしもしー」という永瀬の明るい声が聞こえてきた。勝敗に関わらず、快活に応対してくれる。
この手を難しいと思える人は将棋界に5人も…
まずは序盤から見どころが多かった本局についてだ。先手の藤井が角換わりに誘導すると、永瀬は受けて立つ。定跡の進行で、両者とも時間を使わずに猛スピードで進んでいく。
開始から45分が経った頃、藤井が天王山の位を取った。前例は5局あり、新しい順に△7二角(2局)、△6三角(1局)、△4二金(1局)となっている。角打ちは7四の地点を守ったり、△3六角と王手で飛び出したりする手を狙っている。
すると永瀬はわずか1分で6三の地点に持ち駒の銀を打った。この52手目で前例を離れたわけだが、時間の使い方から当然、事前準備であることがわかる。永瀬にこの手について尋ねると、強烈な答えが返ってきた。

