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「ふふふ」永瀬拓矢が藤井聡太に敗戦後、電話口で本音…なぜ“AI期待勝率の急落”に興味がないか「この手を難しいと思えるのは将棋界に5人も」
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2025/09/27 11:03
王位戦終了直後、再び永瀬拓矢が藤井聡太に挑み、将棋の研鑽に励む日々を語り尽くしてくれた
「(前例の)△7二角を難しいとは思わないけれど、(本譜の)6三に銀を打つ手は難しいと思ったということですね。ただこの手を難しいと思える人は将棋界に5人もいないかもしれません」
理解するのに時間がかかった。つまり本譜のほうが前例よりも勝ると判断しているが、それを理解できる棋士は超少数ということだ。それだけハイレベルな手ということになる。
永瀬は続けた。
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「明らかに棋力に差があるとダメなんですけど、私が難しいと思ったら藤井さんも難しいと感じるものなんです。局面に対する認識が洗練されるにつれて似た考え方をするようになるので、対藤井戦は事前研究をしやすいんです」
まあトップ層でなければ驚くのでしょうし
その後は藤井から4筋の歩を突っかけて、2筋の歩を交換した。双方、4筋に歩を打って局面が収まるかと思われたが、藤井が凄まじい一手を放つ。67手目、なんと2五の地点に角を打ったのだ。3四の歩を取ってから2筋を突破することが目的だが、1四は相手の、1六、3六には自分の歩があっていかにも狭い。
永瀬はこの角打ちをどう見ていたのか。
「一つの変化として、自分が3二に玉を立つところまでは予定でした。可能性のある変化という認識でしたね」
モバイル中継のコメントを見ると、控室がこの角打ちに驚いていることがわかる。それを永瀬に告げると、またしても強い言葉が返ってきた。
「当然というか、考えられる手です。藤井さんもいい形では打てなかったけど、認識の一つではあった手ですよね。まあトップ層でなければ驚くのでしょうし、多くの人には関係のない話なのかもしれません」
これだけのセリフを吐ける者はそうはいまい。永瀬が他と隔絶した努力を積んでいる証でもある。
藤井さんがそれを許してくれない
以下は双方が時間を使う展開になり、藤井が天王山に歩を打った局面で封じ手となった。銀取りなので6三に引く一手だが、なぜ永瀬はこれを封じ手にしたのか。
「私が銀を6三に引くのはこの一手です。対して先手が飛車を3九に寄ってくるのはわかっていました。この一手だと思えない棋士はステージが違うという感じですね。で、飛車寄りへの応手を決めかねたので、ここで封じ手にしました」
初日の進行はどう見ていたのだろうか。

