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「負けても引退しないよ」千代の富士35歳「貴花田18歳に負けて引退」は本当か? じつは違った“最後の対戦相手”…元NHK名物アナが語る大横綱の引き際

posted2025/09/14 11:14

 
「負けても引退しないよ」千代の富士35歳「貴花田18歳に負けて引退」は本当か? じつは違った“最後の対戦相手”…元NHK名物アナが語る大横綱の引き際<Number Web> photograph by JIJI PRESS

千代の富士の断髪式。九重親方(当時/元横綱・北の富士)の手で最後のはさみが入った

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杉山邦博+荒井太郎

杉山邦博+荒井太郎Kunihiro Sugiyama + Taro Arai

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1953年の入局以来、70年以上にわたって相撲の魅力を伝え続けてきた元NHKアナウンサーの杉山邦博氏。歴史の生き証人ともいえる杉山氏が、相撲ジャーナリストの荒井太郎氏を聞き手に昭和の名場面の数々を振り返る『杉山アナのアンチ巨人、大鵬、卵焼き』(大空出版)より、「大横綱の引き際」について語った章を抜粋して掲載します。(全2回の1回目/後編へ)

94歳、レジェンド相撲アナが選ぶ「この一番」

荒井 王者・大鵬もやがて土俵を去るときがやって来ます。30回目の優勝を果たした昭和44年夏場所以降は、優勝のペースもガクンと落ちます。昭和45年初場所後に北の富士、玉の海が同時に横綱に昇進し、時代は“北玉時代”へと移り変わっていきます。優勝力士一覧を見ても北の富士、玉の海の名前が目に見えて増えていく一方で、大鵬の優勝と優勝のブランクが長くなっていきます。昭和46年初場所、玉の海に千秋楽の本割、決定戦で連勝して逆転優勝を果たしますが、これが最後となる32回目の優勝でした。この年の夏場所5日目、21歳の小結貴ノ花に敗れたのを最後に引退を表明しました。

杉山 大鵬さんが貴ノ花に負けて引退を決めた。そこがやはり歴史のバトンタッチの巧妙さというか、縁ですよね。余談ですが、私もあるテレビ番組で、長い間相撲を見てきて、印象に残る相撲を一番だけ選んでくれと言われて非常に困りましたが、あえて大鵬最後の一番を選びました。世代交代というものの重みと大鵬という人物のすごさです。次の時代のヒーローとして、貴ノ花は見事にその後のファンの期待に応えました。ただ、熱戦はほかにもいっぱいありますよ。昭和49年名古屋場所千秋楽の輪島対北の湖。輪島が本割、決定戦と、いずれも得意の“黄金の左”といわれた左からの下手投げで連勝して、逆転優勝を成し遂げます。綱取りだった北の湖に横綱の意地を見せた一番です。私はテレビで実況して音声としても残っています。私はこの一番を本当は挙げたかったけど、それよりもやっぱり大鵬を思い出しちゃった。

【次ページ】 「千代の富士対貴花田」伝説の一番ウラ側

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