魁皇の大相撲ボヤキ解説BACK NUMBER
相撲ファンから批判も「横綱・豊昇龍、まさかの“変化”はアリなのか」元大関・魁皇が独自の見解「あの変化は逆に勇気がいる」「今場所盛り上げた」
posted2025/10/03 17:30
横綱・豊昇龍。9月場所は両横綱による優勝決定戦で敗れ、優勝を逃した
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浅香山博之Hiroyuki Asakayama
photograph by
JIJI PRESS
両横綱による優勝決定戦で、大の里が横綱初の優勝をした九月場所。千秋楽の本割での大の里は、豊昇龍に立ち合いから起こされて、慌てて引いてしまった感じ。引く癖が出てしまいましたね。豊昇龍には“ここ一番の強さ”がある。そのあとの決定戦では、左からまわしを取りに行って投げに行き、結果的には大の里に前に出られてしまった。大の里はしっかり相手を見て、投げにも付いていけたんです。物言いがついた相撲だけど、これは確認のため。ふたりが横綱として、ちゃんと最後を締めてくれましたよね。
賛否両論…横綱・豊昇龍の“変化”「勇気がいる」
前日14日目の若隆景戦での豊昇龍は、立ち合い変化を見せて批判の声もあったようだけど、最初から狙っていくものと、咄嗟に体が動いてしまうものがある。豊昇龍が咄嗟に体が動いてしまったのか、それとも狙っていたのかはわからない。よく、昔の人が言うのは、「変化されて付いていけない方が悪い」「相手をよく見てないから付いていけないんだ」ということ。「横綱たるもの変化はよろしくない」とも言われる。でも、もし、この時に豊昇龍が勝っていなければ、大関琴櫻が休場して不戦勝だった大の里の優勝が、14日目にそのまま決まっちゃっていました。なんとも締まらない場所になってしまう可能性があったのを、千秋楽の決定戦まで引っ張って盛り上げることになった。結果論ですけどね。
豊昇龍は勝負に徹していたのかと想像するけど、逆にあそこで変化できるってなかなか勇気がいることでもある。変化はリスクがありますから。だって負けたら目も当てられないわけだからね。普通に負けるより、変化に付いて来られて負けるほうが余計に批判されますよ。だから一概に変化がいいとか悪いとか言えないんですよねぇ。15日間、勝負に徹した本場所のなかで、豊昇龍に限らず誰でも一番や二番は、そういう相撲もあるかもしれない。変化については、いろいろ見方や受け取り方があり、意見はそれぞれでいいと思います。
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みんな必死だものね。豊昇龍も横綱昇進後は休場が続いたりして、今場所に懸ける思いは相当なものがあったでしょう。当たりも良かったし、攻める気持ちが出ていた。投げに拘るというよりも、立ち合いに当たってから、そこから何か仕掛けていく感じにはなっていたし、今場所はよかったんじゃないかと思いますよ。
優勝→いきなり12敗「真面目な子ほど難しい…」
横綱大の里から金星を挙げたのは前頭二枚目の伯桜鵬。基本、前に出る相撲って強いんです。場所途中で上腕二頭筋を痛めたように見えたけど、廻しを取って引き付けたりはできなくとも、押したりはできるから。


