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野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンク電撃移籍で批判されて…上沢直之が明かす“当時の胸中”「厳しい目で見られるのは自覚していた」アメリカで投球フォーム崩壊…復活するまで
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/13 11:04
今季からソフトバンクでプレーする上沢直之
「気持ちが滅入ると体が…」
かつて日本ハムのエースだった右腕は2023年シーズン後にポスティングシステムを利用して米球界に渡った。しかし、故障にも泣かされてメジャー登板は2試合のみ。結局、1年限りで日本球界に戻ることを決断したのだ。ポスティングを利用し、かつマイナー契約からのメジャー挑戦という旧所属の日本ハムにとって“実入り”の少ない移籍方法を容認した経緯だったため、古巣復帰が既定路線という見方が強かった。だが、上沢が選んだのはソフトバンクだった。
春先あたりまでは批判的な話題がメディアなどでしばしば再燃し、そのたびにSNSやネット上には度を越えて目を背けたくなるような言葉が並んだ。現代社会において、それと断絶して日常生活を送るのは難しい。
「どうしても目や耳に入ってきました。あの頃はなるべくポジティブに物事を捉えるようにしようと考えていました。打たれる試合があっても、たくさんの人の前で投げられているだけ幸せなんだとか。2月のキャンプでも『(ホークスに)来てくれてありがとう』と言ってくださる人もいて、その人のために今やれているだけで幸せなことだと考えていました。気持ちが滅入ると体が動かなくなる。それはアメリカでも経験していたので」
じつはフォームを崩していた
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昨年は米球界でプレーする中で「自分の強みが分からなくなった」というほど投球フォームを崩してしまった。
「日本に戻ってきて、日ハム時代みたいな良かった時の自分の感覚をイメージして取り組みもしましたが、あの頃に戻そうという感じではありませんでした。自分の中では“心地よく投げられるか”を大事にやっていました」
それでも、不安は取り除くのは容易くなかった。徐々に段階を踏みながら前進はできたというが、納得できる投球にはなかなかたどり着かなかった。
だが、待ちわびた覚醒は突然やってきた。
〈つづく〉

