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[覚醒の軌跡を辿る]佐藤輝明「比類なき頂への道」
posted2025/09/13 09:00
text by

金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Hideki Sugiyama
初めてのバッティング練習を見て、藤本敦士は笑いが込み上げてきたという。
「ぼくはバッティングコーチじゃなかったんで、あのときの彼がどんなことをやっていたかはわからないんですけど、ボールを遠くに運ぶっていう天性は物凄く感じましたね。なんであんな軽く打って、あそこまで飛ぶんやって。その理屈がぼくにはわかりませんでした(笑)」
なにしろ、ドラフトで4球団が競合した大物ルーキーである。もとより、ただ者であるはずもない。それでも、プロ入り1年目の佐藤輝明は、阪神、ヤクルトで13年間の現役生活を送り、コーチとしても7年目を迎えようとしていた藤本の舌を巻かせた。
ただ、度肝を抜く、というほどではなかった。
「身体はできてる。パワーもある。ただ、見たこともないような逸材だったかと聞かれると、う~ん、そこまでではなかったかな。あくまでぼくの感想ですけど、まだプロとしての体力面みたいなのは全然ないな、と。プロで143試合戦える体力はない。ぼくみたいな小さいのと違って、大きな身体を動かすには大きな出力がいる。そういうのは、まだないなと。それはすごい感じました」
プロとしての一歩目を踏み出したばかりの選手に対する評価、印象としては、いささか厳しすぎるかもしれない。とはいえ、藤本には藤本なりの、スラッガーに対する見方が厳しくなってしまう理由があった。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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