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イタリアGPで4カ月ぶりの復活勝利の裏にあった、フェルスタッペン、レッドブル、ホンダそれぞれの決断《F1史上最速レースタイム達成》
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/09/11 11:01
イタリアGPで今季3勝目を挙げたフェルスタッペン
フリー3回目はセットアップ変更の効果を確認できる最後のセッションとなるので、ほとんどのドライバーは変更しても微調整にとどめる。そんな中、レッドブルとフェルスタッペンは賭けに出た。
リアウイングを削って空気抵抗を減らせば、ストレートスピードは上がる。ただし、ブレーキングやコーナーではダウンフォースが少ない分、マシンが不安定になりやすい。しかし、マクラーレンに勝つためにはそうするしかない。
フェルスタッペンのレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼは、決断についてこう振り返る。
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「われわれの提案をマックスも理解してくれた。もっとスピードがほしい。リアのコントロールは自分でやるから、と」
果たして、そのリアウイングの変更が奏功した。予選でマクラーレン勢と激しいタイムアタック合戦を演じたフェルスタッペンは、2位のノリスを0.077秒抑えてポールポジションを獲得。時速264.682kmという平均速度は、2020年イタリアGPでルイス・ハミルトン(当時メルセデス)が記録した時速264.362kmを抜いて1周の最速平均速度を樹立した。
もうひとつの記録
日曜日のレースでは、スタート直後に一度はノリスに先行を許したものの、ストレートスピードを生かして再逆転。トップに立った後は、マクラーレン勢を寄せ付けず快勝した。
この日、フェルスタッペンはもうひとつの記録を樹立した。それは「F1史上最速レースタイム」だ。これまでの記録は伝説的ドライバーであるミハエル・シューマッハ(当時フェラーリ)が2003年のイタリアGPで記録した1時間14分19秒838(平均時速247.585km)だった。22年間誰にも破られなかったこの記録を、フェルスタッペンは1時間13分24秒325(平均時速250.706km)でチェッカーフラッグを受けて塗り替えた。
この2つの記録は、速さを追求し続けたホンダとレッドブル、そしてフェルスタッペンが「スピードの神」から授けられた勲章でもあった。

