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イタリアGPで4カ月ぶりの復活勝利の裏にあった、フェルスタッペン、レッドブル、ホンダそれぞれの決断《F1史上最速レースタイム達成》
posted2025/09/11 11:01
イタリアGPで今季3勝目を挙げたフェルスタッペン
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尾張正博Masahiro Owari
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Getty Images / Red Bull Content Pool
「昨年のフェルスタッペンはモンツァで勝者から40秒(実際には37.932秒)遅れでフィニッシュしていたのに、なぜ今年はマクラーレンに20秒(同19.207秒)差をつけて勝てたのか。まったく理解できない」
これはジョージ・ラッセル(メルセデス)が先日のイタリアGP直後に語った言葉。ラッセルは今年8月上旬のハンガリーGPで3位表彰台を獲得したが、そのときはフェルスタッペンの50秒以上も前でチェッカーフラッグを受けていた。
そのフェルスタッペンがわずか2戦後に自分より速くなり、さらには今シーズン最速のマクラーレンを凌駕して優勝したのだから、驚くのも無理はない。ラッセルだけではない。モンツァのパドックにいた多くのレース関係者が、モンツァでのフェルスタッペンとレッドブルの快走に衝撃を受けていた。
4カ月ぶりの勝利の要因
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フェルスタッペンはなぜイタリアGPでマクラーレンを倒し、エミリア・ロマーニャGP以来約4カ月ぶりに優勝できたのか。そこにはイタリアGPの舞台であるモンツァというコースの特性が大きく関係していた。
モンツァは「Temple of Speed(スピードの神殿)」という愛称で親しまれている。4本のストレートを低・中・高速のコーナーで繋ぎ合わせた5.793kmのコースは、ラップタイムの76%、全長のおよそ83%がエンジン全開となる超高速コースで、F1が開催されるサーキットの中で最も平均速度が高い。
そのモンツァにホンダはフレッシュなエンジン(ICE=内燃機関)を投入してきた。現在のF1はシーズンを通して4基までしかエンジンを使用することができない。ライバルチームの多くがベルギーGPまでに4基目のエンジンをすでに投入しており、マクラーレン、フェラーリ、メルセデス、レッドブルのトップ4チームで、4基目を使用していなかったのはフェルスタッペンだけだった。
エンジンの性能は使用するマイレージとともに徐々に劣化していく。降ろしたてのフレッシュなエンジンが最も馬力が出る。その4基目をホンダとレッドブルはどのレースで使用するのか、ぎりぎりまで迷っていた。

