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イタリアGPで4カ月ぶりの復活勝利の裏にあった、フェルスタッペン、レッドブル、ホンダそれぞれの決断《F1史上最速レースタイム達成》
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/09/11 11:01
イタリアGPで今季3勝目を挙げたフェルスタッペン
ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は4基目を投入するに至った経緯を次のように説明した。
「元々はモンツァでニューエンジンを入れる予定はなかったんです。次のバクー(アゼルバイジャンGP)もストレートが長く、エンジン性能が問われるコースだからです。ただ、入れるからには最高の結果を得たい。モンツァかバクーのどちらに入れるのかはチーム側とずっと協議していた。モンツァに来て火曜日になっても、まだ最終決定は出ていませんでした」
通常、サーキットの現場でPU(パワーユニット)の準備を開始するのは火曜日だ。まず点検し、補器類などを取り付けた後チーム側へ引き渡し、水曜日にチームがPUを車体に取り付けることになっている。
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モンツァではこれ以上は待てない水曜日になって、ようやくレッドブルから「モンツァにフレッシュエンジンを入れる」という連絡が届いた。
「最後の最後に決定が覆りました。おそらくチーム側でマクラーレンと戦えるという見通しがたったんだと思います。ここまで遅いタイミングだったのは、私の経験の中でも初めてでした」
さらなる秘策
今年のレッドブルは低速コースを不得意とする一方、高速コースでは成績が良かった。対してマクラーレンは低速から中速コースで強いものの、高速コースではアドバンテージを発揮するレースが少なかった。モンツァはマクラーレンの弱点を突きつつ、レッドブルの長所を生かすことができる絶好のチャンスだった。
しかし、マクラーレンの壁は想像以上に高かった。初日のフリー走行でトップタイムをマークしたのはランド・ノリス。フェルスタッペンは0.199秒遅れの6位にとどまった。
そこでレッドブルとフェルスタッペンはストレートスピードをさらに上げる決断を下す。セットアップを変更して臨んだ土曜日のフリー走行3回目。マクラーレンに対して、まだスピードが十分ではないと判断すると、なんとセッション中にリアウイングをさらに削った仕様に交換するという荒療治を決断したのだ。

