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東大合格150人“あの”開成高の水泳部がリレーで「インターハイ初出場」のナゼ…快挙のウラにあった“エースの爆泳”「無我夢中で…それが良かった」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byTadashi Hosoda
posted2025/09/11 11:04
左から高本亮(1年、背泳ぎ)、中出恵資(1年、平泳ぎ)、岡本悠(2年、バタフライ)、滝沢知哉(2年、自由形) 。開成高初となるメドレーリレーでの全国出場を決めた
そんな風に高いモチベーションで挑んだ中出も、外プール特有の風による水のうねりに大きな影響を受け、都大会よりもタイムを落とすことになる。結果的に続く第3泳者(バタフライ)の岡本が戻ってきた時点で、全国標準はまさに当落線上というタイムだった。
スタンドで観戦していた水泳部顧問の吉野修司はこう振り返る。
「ギリギリ……いや、ひょっとしたらダメかもしれないくらいのところでアンカーに繋がれたんです。でも、そうしたらアンカーの滝沢がとんでもない泳ぎをしてくれて」
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第4泳者の自由形を務めたのはチームの大黒柱である2年生の滝沢だった。滝沢は昨年秋の国スポ50m自由形(少年B)で2位に食い込むなど、全国的にも実績のある選手である。ただ、そんな滝沢をもってしてもギリギリの状況であることは、それまでの3人のタイムを見てうっすらとは理解していたという。
「後々計算したら、引継ぎの時点では51秒2で泳がないと標準記録が切れない状況だったんです。当時、個人でのベスト記録が51秒9とかで。リレーは引継ぎがあるので多少速くなるとはいえ、これって相当、頑張らないと出ないタイムなんですよね。
だからもし事前に『このタイムで泳がないと全国に行けないよ』と分かっていたら多分、諦めていました(笑)。とにかくみんなが外プールの環境に苦戦している分、自分が巻き返さなければ……という責任感を持って泳ぎました」
結果的にがけっぷちに追い込まれた状況が、むしろ滝沢のアドレナリンを全開にしてくれた。
結局、滝沢は50秒6という驚異的な自己ベストで泳ぎ切り、開成は同校史上初となるメドレーリレーでの全国行きを決めた。
このタイムは、メドレーリレーに出場した全選手の中でぶっちぎりの最速タイムでもあった。
なぜ「あの」開成がインターハイに?
こうして開成高のメドレーリレーチームの4人は、周囲の誰もが予想すらしていなかったインターハイ出場を決めた。中でも特筆すべきは、4人がともに開成入学後に記録を伸ばしているということだ。
では、全国屈指の進学校の水泳部には、一体どんな「秘密」があったのだろうか。
<次回へつづく>


