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東大合格150人“あの”開成高の水泳部がリレーで「インターハイ初出場」のナゼ…快挙のウラにあった“エースの爆泳”「無我夢中で…それが良かった」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byTadashi Hosoda
posted2025/09/11 11:04
左から高本亮(1年、背泳ぎ)、中出恵資(1年、平泳ぎ)、岡本悠(2年、バタフライ)、滝沢知哉(2年、自由形) 。開成高初となるメドレーリレーでの全国出場を決めた
運命の関東大会…第一泳者が「まさかの事態」に
「本当に……自分の泳ぎは後悔しか残ってないです」
今年7月、埼玉で行われた運命の関東大会。都大会を突破し、東京代表として出場していた400mメドレーリレーで、開成チームの第1泳者(背泳ぎ)を務めた高本の頭に浮かんだのは、そんな悔恨だった。
前月に行われた都大会で、開成チームはインターハイの参加標準記録を突破することに成功し、5位に入っていた。だが、前述のように高校水泳のレギュレーション上、都大会を突破したうえで関東大会でも再度、標準記録切りを達成しなければ全国の舞台に立つことはできない。
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「都大会の結果を受けて、みんなのベストの泳ぎがうまくハマれば切れるタイムだということは分かりました。でも、だからと言ってそんなに簡単なタイムでもない。だから当日はめちゃくちゃ緊張していました。受験より全然、緊張したと思います(笑)」
高本は当日の心境をそんな風に振り返る。
高本は今季、全中で入賞していた個人メドレーを封印してまで背泳ぎに懸けていた。そこにはもちろん、メドレーリレーで上に行くことが念頭にあった。そんな男がプレッシャーを感じた要因のひとつに、関東大会が行われる埼玉県の会場が「外プール」だったことがある。
近年は大きな大会のほとんどが室内プールで行われる。そのため、開成カルテットはそもそも外プールでのレースの経験が乏しい。しかも高本の担当する背泳ぎは、室内であれば天井のラインを目印に泳げるのだが、外プールには当然それはない。
加えて今年はこの酷暑である。慣れない環境の中で、高本は熱中症気味にもなっていた。
結果的に高本はコース内で大きく蛇行し、コースロープに激突するロスを引き起こしてしまったのだ。その結果が冒頭の後悔だったわけだ。
続く第2泳者(平泳ぎ)も、1年生の中出恵資だった。
「僕はこれまで全国大会に出たことがなかったので、大会の少し前から家でもずっと興奮していたくらいで。ほんとに……ワンチャン出られるんじゃないかと思って」

