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東大合格150人“あの”開成高の水泳部がリレーで「インターハイ初出場」のナゼ…快挙のウラにあった“エースの爆泳”「無我夢中で…それが良かった」 

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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photograph byTadashi Hosoda

posted2025/09/11 11:04

東大合格150人“あの”開成高の水泳部がリレーで「インターハイ初出場」のナゼ…快挙のウラにあった“エースの爆泳”「無我夢中で…それが良かった」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

左から高本亮(1年、背泳ぎ)、中出恵資(1年、平泳ぎ)、岡本悠(2年、バタフライ)、滝沢知哉(2年、自由形) 。開成高初となるメドレーリレーでの全国出場を決めた

 前述のように高本は中3時の全中で入賞しており、中3の夏まで普通にバリバリに泳ぎまくっていた。そんな中で、一般的には中学受験よりもハードルが上がると言われる高校受験で、開成に挑戦するというのはなかなか難しそうにも見える。

 意識したのは時間の使い方だった。塾に行くよりも独学の方が効率的だと考え、参考書をベースに自分で学習することを選んだ。夏の全中の期間中にも、ホテルで時間を見つけては自習をするなど、隙間時間でも細かく対策できるようにしたという。

 結果的に今年4月、高本は難関の高校受験を突破し、無事に開成高校水泳部の一員となった。そして――それは同時に、メドレーリレーが泳げる4人が奇跡的に揃ったことを意味していた。

2年夏で引退する選手も…最初で最後のチャンス

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 ただ、この時点で高2になっていたバタフライ泳者の岡本悠は、すでに今夏での競技引退を決めていた。それはもともと「中学まで」と考えていたものを、引き延ばしてなんとか高校でも続けていたからだった。

 そもそも基本的に開成ではほとんどの運動部員が2年生で引退を選ぶ。

 それは、大学受験年度に入ることに加えて、同校にとって春の一大イベントである「運動会」の運営が3年生を軸に行われ、その準備もしなければならないという複合要因からだった。

 その良し悪しはともかくとして、岡本の引退が意味するのは、インターハイにこのメンバーで挑めるチャンスは今年が「最初で最後」ということだった。しかも、異なる4泳法で全国レベルの選手4人が開成という超進学校にそろう可能性は、端的に言えば今後、限りなく低い。

 インターハイに出場する条件は、まずは都大会で8位以内に入るか全国標準記録を突破して関東大会への出場権を得る。そのうえで関東大会の舞台で再度、全国標準記録を突破することが必要になる。

 そうして開成高校のカルテットは、同校の歴史上初めてとなる「メドレーリレーで全国出場」という難題に挑むことになったのである。

【次ページ】 運命の関東大会…第一泳者が「まさかの事態」に

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#開成高校

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