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甲子園の風BACK NUMBER
広陵高校の暴力問題“発覚前に投稿された”動画に異例の反響「寮よりも“通い”がいい」今浪隆博に聞く「寮生活の謎ルール…なぜ常識からズレるのか」
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph bySankei Shimbun
posted2025/09/07 17:00
8月7日、甲子園で指揮をとる広陵の中井哲之前監督。初戦に勝利した3日後、広陵は出場辞退を発表した
「下級生はこの道を通るな」不条理なルール
――大学であっても、それだけ不条理なルールがあった、と。
今浪 当時はそういうルールしかなかったですね。僕はそれにすごく疑問を感じるタイプの人間だった。たとえば寮から駅に向かうルートで「この道は3年生と4年生しか使っちゃいけない」と言われたら、「えっ、あなたたちが作ったの? 公共の道じゃないの?」と思いますよね(笑)。道路交通法は守るだけの合理的な理由があるけど、寮のルールはすごくアホらしい。で、そのルールを後輩に守らせようとする先輩方も、間違いなく理由がわかっていない。俺らがそうやってきたからお前らもやるんだという、ただそれだけ。こういう必要のない伝統が、寮生活にはいくつもありました。一方で、野球のことに関しては不条理を感じることはなかったです。問題はあくまでも寮生活。ただただそれがストレスでした。
――たとえば広陵の「カップ麺を食べてはいけない」というようなルールも……。
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今浪 いま現在、僕が寮で生活しているわけではないですし、あくまでも個人的な考えですが、キーワードは「伝統」だと感じています。野球部にかぎらず運動部の寮生活には、たいてい選手間の伝統のようなものがある。言葉としては「伝統」という一言なんですけど、その種類はたくさんあると思うんですよね。たとえばカップ麺を例にとると、仮にそれを食べることの栄養面・健康面でのデメリットが禁止になった理由だったとして、その意味が継承されているか、当事者たちが理解しているかって、クエスチョンだと思うんですよ。
――たしかに。
今浪 もちろん、そんな理由もなく単に「下級生は食べてはいけない」というルールであっても、伝統といえば伝統です。こういった謎のルールっておそらくどんな寮にも存在していて、暴力をふるったとされる生徒も、なぜそんな伝統ができたのか理解していないはずなんですよね。集団生活の特殊な環境に身を置いていると、疑いを持たなくなる。思考が停止するというか、「カップ麺=ダメ」となってスイッチが入ってしまう。なぜダメなのか考えることをしなくなるんです。

