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クイズのために「偏差値78の名門校」から「偏差値44の特色校」に転校…!? 伊沢拓司と田村正資に憧れて『高校生クイズ』を制した双子の青春秘話
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:00
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
弟・言が県外へ転校…離ればなれになったふたり
桜丘中高は、三重県にある私立中高一貫校である。言のように以前の学校で不登校だった生徒の受け入れも多く、偏差値では測れない魅力のある学校だった。そして、何よりそこにはクイズ研究会があった。しかも、翌年にはちょうど部に昇格するという。
「その前年も全国大会に出ていましたし、しかも三重だと九州より環境がいいんですよね。九州だと本当にラ・サールの周囲にクイズをやっている学校が全くないんです。でも、三重なら名古屋や大阪の大会にも出られる。『これはいいな』と思って」
そうして中学2年生の2月に、言はラ・サールから桜丘へと転校した。
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寮生活をはじめたこともあり、転校後は再び学校にも通うようになった。と同時に、こんなことも考えるようになった。
「問がラ・サールで『高校生クイズ』の全国大会に出て、僕は桜丘から出て――夢の全国大会で戦えれば、“双子対決”で注目されるんじゃないか」
実は言が転校する頃には、東兄弟の競技クイズの実力はラ・サールの部内でも2人でトップを争うようなレベルになっていた。それはそのまま、全国でも上位で戦えることを意味する。だからこそ、普通に考えればこの言の妄想は決して不可能ではないはずだった。
初めての高校生クイズで、まさかの惨敗
そして翌年、2人は自身初めてとなる『高校生クイズ』に意気揚々と参加する。だが、兄の問の結果は冒頭の通り、予想外の惨敗だった。
言は言で桜丘から三重県予選に出場したものの、こちらはこちらであえなく敗退した。実はこの年、同校のクイズ研究部は言とは別のチームが『高校生クイズ』で全国制覇を達成することになる。そんな「意外なライバル」の存在も立ちはだかった。
結果的に、東兄弟初の高校生クイズは、2人とも全国の舞台を踏むことすらなく終わることになってしまった。
「高1の時は『全国大会で2人で戦えればいいかぁ』くらいの気持ちで出たんですけど、そう甘くはないという感じでしたね。これ、どうしようかなと」(問)
予選を終え、問は逡巡した。
基本的な競技クイズの能力ならば、高校でもトップクラスの自信はある。だが、こと『高校生クイズ』というフィールドである以上は、それだけでは勝てない。チームワークや、仲間との連携の重要性が想像以上に大きいことが分かってしまった。
もちろん、朧げな願いの通り、かつての“知力の甲子園”路線に番組が戻ってくれれば、全国への出場の可能性は上がるだろう。だが、そんな確証はあるはずもない。では、どうしたらいいのか。少年時代からの夢に辿り着くために、最も確実なルートは何なのか?
そして、遠いようで近かった結論へとたどり着く。
「チームワークや本番での連携を考えたら――やっぱり言ちゃんと出るのが一番だよな」

