クイズのために「偏差値78の名門校」から「偏差値44の特色校」に転校…!? 伊沢拓司と田村正資に憧れて『高校生クイズ』を制した双子の青春秘話 

　実は競技クイズと『高校生クイズ』の間には同じクイズと言ってもスタイルに大きな差がある。純粋な知識や押しの速さを問う競技クイズに対し、あくまでバラエティである『高校生クイズ』はよりエンタメ性の強い問題が多いからだ。

　特に東兄弟が中学にあがるタイミングで“知力の甲子園”路線が終了してからは、原点回帰でバラエティの色が濃くなっていた。そのため競技クイズのプレーヤーの中には、『高校生クイズ』には出場せず、他の競技性の高い大会を目指す選手も少なくなかった。

　ただ、2人の原点はあくまで『高校生クイズ』にあった。競技クイズに邁進しつつも、夏になれば「ひょっとしたらかつての難問路線に戻るかも……」と淡い期待を抱きながら、同番組を見ていたという。

弟・言が内包していた「不登校気質」

ADVERTISEMENT

　そんな中、徐々に競技クイズの実力が上がっていくにつれ、少しずつ双子の「気質」の違いも顕著になりはじめた。

　兄の問はどちらかと言えば社交的なキャラクターで、口数も多い。クイズを軸に様々なことに取り組むことを苦にしないタイプである。学校生活についても、小学校時代から欠席した日はないほどだった。

　一方で、弟の言は比較的クールで、もともとあまり集団行動が得意ではないタイプだった。勉強は苦手ではなかったが、毎日朝から学校に行って、教室の椅子に座って何時間も授業を受けるということ自体に抵抗があった。中学入学後はその傾向がさらに強まり、言は徐々に不登校気味になっていった。

　不登校というと、とかくネガティブなイメージがつきまとうが、なにか周囲にマイナスな要素があったわけではない。当人や兄の問に言わせれば、「これはもう性格の問題なので」ということになる。

　不登校と言ってもずっと家に引きこもっていたわけではなく、夕方になれば学校に行き、毎日のようにクイズには勤しんでいたという。とはいえ学校である以上、進級のためには一定の出席日数が必要になる。言はその条件を満たせなさそうだった。そのため、中学2年生の終わり頃には転校を考えるようになったという。

　そこでも基準となったのは、研鑽を積んでいたクイズだった。言が振り返る。

「普通に考えれば地元の公立中に編入すればいいんですけど、普通の公立中にクイズ研究会ってまずないんですよね。次に通信制も考えたんですけど、通信制でもやっぱりクイズはしにくくなってしまう。そういう中で桜丘に出会って」

【次ページ】　弟・言が県外へ転校…離ればなれになったふたり