クイズのために「偏差値78の名門校」から「偏差値44の特色校」に転校…!? 伊沢拓司と田村正資に憧れて『高校生クイズ』を制した双子の青春秘話 

テレビで見た伊沢や田村の姿「これ、カッコいいな」

　そのころの同番組は、前述のように“知力の甲子園”と銘打ち、競技クイズをベースにしたスポーツ的なガチンコバトルの様相を呈していた。問には双子の弟・言(ごん)がいたが、その「甲子園」の熱は2人の心をがっちりと掴んだ。

「ちょうど伊沢（拓司）さんや田村（正資）さんとかのいた開成が出ていたりして、めちゃくちゃ難しい問題をサラッと答えるわけです。『これ、カッコいいな』とシンプルに思って」（言）

　年にたった1度の大舞台で、それぞれの青春を懸けて戦うクイズプレーヤーたちの姿は、一際輝いて見えた。

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「自分たちもこの舞台で、クイズで戦ってみたい。優勝してみたい――」

伊沢拓司　©Wataru Sato

　そんな思いは、双子の心の中に強く根付いた。そしてそんな夢は進学の際にも2人の選択に大きな影響を与えることになる。

　親の仕事の都合で福岡から鹿児島へと引っ越したのが、小学校卒業時のこと。ちょうど中学受験の頃だったこともあり、2人でクイズ界でも名門の一角として名前を知っていたラ・サール中学を受験することにしたのだ。

「僕らが本格的に受験の勉強を始めたのって小6の夏とかだったんですよね。それって普通に考えるとスゴい遅いんですけど、そういう中で『ラ・サールに行けたらクイズができる』というのは大きなモチベーションになりました」（問）

　ちなみに小学校の卒業の寄せ書きに書いた夢は、「高校生クイズで優勝する」ことだった。

名門ラ・サール中のクイズ研究会で成長

　そうして2人はともに中学受験に合格。名門の門をくぐることになる。

　4月に入学すると、すぐに2人が向かったのは同校のクイズ研究会である。そして、そこで初めて強豪の実力を目の当たりにする。

「それこそ部活に行って2時間とか居て、ボタンが1回も押せない。ただ座っているだけみたいな感じで」

　ただ、そこでショックを受けることも2人にはなかった。そもそもクイズが強い学校に行きたくてラ・サールを選んだのだ。そこに強い先輩がいる。それはむしろ、願ったり叶ったりの状況だったからだ。

　そこからは先輩からもらった「ベタ問」（※競技クイズで頻出問題とされる基礎問題）の問題集を読み込み、部活ではひたすら実戦を繰り返した。加えて、2人にとって大きかったのは双子であったことだ。家に帰っても同等の実力のライバルが常にいる。自宅でもひたすら問題を出し合い、ボタンを押し合った。

　すると夏になる頃には、部外の大会で徐々に結果が出るようになる。

「部内ではそんなに強くなった感じはなかったんですけど……福岡とかの大会に行くと結構、上の方まで残れるようになって。僕ら、中1なので大抵の大会ではキャリア的には一番下なんですよ。それでもそこそこ戦えるようになって、『あ、実力付いているんだな』と」

　そうして2人はますます競技クイズにのめりこんでいった。部活はもちろん、九州内で開催される大会にも積極的に参加していった。

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