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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
停滞ドジャース、カーショーでもグラスノーでもなく…山本由伸が今やエース「ただ1人ローテ死守」「安定感が大幅上昇」懸念は“勝ち味”だけ
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/07 06:00
安定したピッチングを続ける山本由伸。ドジャース2年目にしてエースになったと評しても過言ではない
SO9が「9」をオーバーすると、打者を圧倒するパワーピッチャーということになる。山本はSO9が2年連続10以上、小さい体だが山本は屈指のパワーピッチャーだ。
SO/BBは、投手の安定感の指標で「3.5」あれば優秀とされる。この数字については昨年に比べて今季は悪化している。打者に投球を見極められ、四球が増えている。しかしH9が7.8から6.5と格段に改善している。打者にはじっくり見られているが被安打は少なかったのだ。とはいえQSの比率が大幅に上昇しているのは、安定感が大幅に増したことを意味している。
降板後に勝利投手が消えるケースがネックか
MLBでは好投手に対しては一発狙いをする打者が増える。HR9が0.7から0.8とやや増えたのは振り回す打者が増えたといえよう。先発投手のストライク率は60%が合格ライン、65%あれば優秀だが、山本は両年ともに優秀なレベルである。
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先発投手のP/IP、1イニング当たりの投球数は「15」が目安。山本は2年連続で16をオーバーしており、やや球数が嵩む傾向にあるといえる。球数が多いと長いイニング数を投げられない。直近の登板だったダイヤモンドバックス戦(現地8月31日)では、7回10奪三振1失点の好投を見せたものの、タナー・スコットが同点3ランを浴びて12勝目はならなかった。このようにリリーフ投手が打ち込まれて勝利投手の権利が消えるケースがあるが、「勝ち味が遅い」のが山本のネックではあろう。
しかし山本は日本時代の2021年は193.2回2911球、22年には193回2909球を投げている。スタミナ的にはまだ余裕があると言える。ロバーツ監督は、日本人投手には「無理をさせない」のが基本だ。山本もオリックス時代のイニング数を超えて投げることは、当面ないのではないか。
球種、スミスらとの防御率を見ても進化の跡が
そんな山本だが――変化球の球種割合やウィル・スミスら各捕手別の防御率などを見てみても、進化の跡が見て取れる。〈つづく〉

