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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「練習のシーンは…まさに地獄だったわ!」なぜ“昭和スポ根アニメ”は異国で愛された? 伝説の女子バレー物語「日本人はみんなミラ・ハヅキの娘よ」
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph byICHI
posted2025/08/29 11:04
アニメ『アタッカーYOU!』に登場する(左から)多岐川絵里、葉月優、早瀬奈美
実際のところ、イタリア・バレー界には『ミラ・エ・シロ』=『アタッカーYOU!』についてなら私に語らせて、と息巻く面々が引きも切らない。VNLと世界バレーを大会中継するDAZNイタリアの実況女性アナ、マリア・ピア・ベルトランさんもその一人だ。
1988年生まれの彼女は再放送で『ミラ』に夢中になった。6歳でバレーを始めた彼女は、朝の再放送を見てから学校に行くのが日課。一番のお気に入りはセッターのカオリ(主要キャラの一人、多岐川絵理から改名)だったという。
「同じポジションでプレーしていたからカオリは私のお手本。彼女の真似をしてアパートや学校の廊下、壁に向かって何度もトス練習をしたわ。そうそう、彼女の必殺技ドライブサーブも練習したわね」
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話しているうちに記憶の扉が開いたらしく「ああ、思い出した!ミラがいつも学校に持参していた、白ごはんのつまったランチボックス(弁当箱)!いつも不思議に思って見てたわ」と声に朗らかさが増す。
セリエBでもプレー経験があるベルトランさんは、『ミラ』がヒットした要因を冷静かつエモーショナルな視点から分析してくれた。
珍しかった女子スポーツのアニメ作品
「なぜイタリア中の女子が熱狂したかというと、男子向けのスポーツアニメがいくつかあった中で、女子(団体)スポーツを扱ったほぼ唯一の作品が『ミラ・エ・シロ』だった、というのは大きいでしょうね。子供心に遠い国日本が舞台なんだなとわかってはいたけど、それはあまり気にならなかった。それより、キャラクターたちが生き生きとおしゃべりする話題が学校の悩みだったり、好きな男の子のことだったり、“自分たちと同じだ!”って共感できたことの方が大事で、本当に嬉しかった。たぶん、ヒットした本当の秘密はそれじゃないかしら」
彼女もまた少女時代に、私はミラ、私はナミ、とキャラクターになりきってバレーボールに親しんだ。夏の趣味であるビーチバレーではチーム名を「ミラ」にしている。
「日本だけじゃなく『ミラ・エ・シロ』はイタリアの私たちにとっても“自分たちのストーリー”になったのよ」


