甲子園の風BACK NUMBER
「甲子園より山梨、京都の方が」酷暑だが…34度台気温の対策は「採尿検査、処方された漢方」「練習はTシャツ+ハーパン」各校に聞いた実態
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間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/29 17:00
最高気温30度超どころか酷暑日も珍しくなくなった期間の夏の甲子園、各チームはどんな対策をしていたのか
脱水のリスクが高まっていると判明した際は、水分や塩分を多めに取るように指導者が選手に促す。平野真吾部長は「数値を参考の1つとしながら、選手の表情や動きに普段と違いがないか観察しています」と説明する。東洋大姫路では体重やスイングスピードなど様々な要素を数値化する習慣がついており、暑さ対策でも感覚だけに頼らない。
試合中はアンダーシャツを頻繁に着替えたり、5回終了時に設けられるクーリングタイムで体を冷やし過ぎたりしないようにチームで共有した。今夏の甲子園では4試合を戦って、足をつる選手は1人もいなかった。
「たんぱく質」「Tシャツにハーパンで練習」
優勝した沖縄尚学は栄養面を重視している。基本的な熱中症対策は大前提として、伊志嶺大吾部長は「暑い場所で何か対策をするよりも、体に取り入れる普段の栄養を大事にしています」と話す。
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特に大切にしているのは「たんぱく質」。日頃から、たんぱく質が多く含まれる食材を積極的に摂取する。甲子園入りしてからは滞在するホテルの協力を得て、たんぱく質が多く含まれている鶏ささみを補食として取っている。
伊志嶺部長が語る。
「たんぱく質は水分を体に取り込んでおける性質があると聞いています。鶏ささみは体づくりの面でも筋肥大につながります。筋肉量を増やせば疲労を軽減できますし、効率良く出力して体への負担も小さくできます。体づくりが暑さ対策につながると考えています」
ベスト4入りした山梨学院は暑さで体調を崩す要因がコンディション不良にあると考え、夏場は疲れを蓄積させない工夫を凝らしている。練習の休養日をつくったり、Tシャツとハーフパンツ姿で打撃練習だけに限定したりする。山梨大会や甲子園に入るまでの期間は、夕方の練習を増やしたという。吉田健人部長は、こう話す。
「山梨は甲子園より暑いです。朝から丸一日使える日でも、気温が下がる時間帯から練習して選手への負担を軽減しました。疲労の蓄積によって熱中症にならないように心がけています」
処方された漢方を飲む学校も
甲子園に入ってからはホテル生活になる。涼しさに体が慣れるのを避けるため、部屋の空調は設定温度を下げ過ぎないように徹底した。朝食では味噌汁で塩分を補うなど、グラウンド外の過ごし方にも気を配った。
連覇を目指して準々決勝で敗退した京都国際は試合前、マグネシウムのサプリメントを摂取している。マグネシウムは足のつりに対する予防効果があると言われている。試合が午後の時間帯にかかる時は、高野連が準備しているおにぎりやゼリーなどを補食に活用する。中でも、シャーベット状の飲料「アイススラリー」は各校から好評だった。
京都国際は暑さの面で甲子園に問題を感じていない。

