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日大三エースはなぜ“笑った”のか? 県岐阜商・横山温大にアルプス大声援が送られて…秋はコールド負け、“甲子園マウンドで歌う”近藤優樹は何者か
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/22 11:06
日大三のエース・近藤優樹
「昨日、どんな応援かはYouTubeで確認しました。なので、聴いたやつだ、って嬉しくなりました。自分が乗っていけば、守備のリズムも出てくるので」
まずは、このピンチを無失点で切り抜ける。9回も先頭の横山をレフトフライに打ち取るなど三者凡退。日大三は近藤の粘り強い投球でタイブレークに持ち込み、延長10回の末、4−2で勝利した。
「球が速くないので…」なぜ打たれないのか?
監督の三木有造のモットーは「ガッツ、気合、根性」。この言葉に象徴されるように日大三は、気持ちを前面に出す選手が多い。そんな中、近藤の脱力具合は異色に見える。
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「1年生のころから『三高っぽくない』ってよく言われてました」
ただ、いつも和やかな近藤だが、秘めている向こう気の強さが表れたシーンがある。
8回裏、先頭の3番・内山元太をストレートの四球で歩かせた場面だ。4つ目のボールコールを受けたあと、くるりと背中を向け、渋面をつくり、顔の前で右手をヒラヒラと振った。自分をたしなめる仕草のようにも見えたが違った。
「審判との相性というか。それがボールかというのもありました。2球目と、3球目かな。ただ、あそこで開き直れた感じではあります」
意図的にボールを長く持ち、打者をじらす作戦もたびたび使った。
「審判に注意されるのも覚悟でやりました。球が速くないので、駆け引きじゃないですけど、いろんなことを考えながら投げてます」
「柔道初段でしたっけ?」
取材中も周りがよく見えていた。ある記者がこう質問したときのことだ。
「柔道初段でしたっけ?」
近藤がニンマリと笑う。
「柔道は……川上(幸希)じゃないです?」
冷静に記者の勘違いを指摘した。

