日大三エースはなぜ“笑った”のか？ 県岐阜商・横山温大にアルプス大声援が送られて…秋はコールド負け、“甲子園マウンドで歌う”近藤優樹は何者か

　銀傘から滝のような拍手の音が落ちてきた。

横山と“最後の対戦”なぜ笑ったのか？

　2−2の同点で迎えた9回裏、県岐阜商の打席に7番・横山温大が入ったときのことだ。横山は左手の指の大部分を欠損しており、ほぼ右手1本でスイングをする。そんなハンディを克服し、ここまで毎試合ヒットを記録。甲子園の「スター」になっていた。

県岐阜商の7番・ライト、横山温大 ©Hideki Sugiyama

　もし、ここで横山の出塁を許したら、完全な県岐阜商ペースになる。県岐阜商の応援のすさまじさは一昨日の準々決勝、横浜と県岐阜商の試合で実証済みだった。

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　しかし、日大三のマウンドを守っていたエースの近藤優樹は笑っていた。

「4番（バッター）と横山君がいちばん嫌でした。けど、勝手な妄想で、自分を応援してくれてるんだって思って投げました。甲子園って、うちわがはためいていたりして、独特の景色なんです。音の反響もすごくて。一塁側の音が三塁側から聞こえてきたりする。周りもよく見えていたし、楽しかったですね」

　身長171cm、最高球速は138km。しかも、右投手だ。これといった特徴はない。それでいながら高校球界を代表する強豪校のエースを任されている。近藤の武器の1つは、この神経の太さだった。

日大三のエース、近藤優樹 ©Hideki Sugiyama

昨秋はコールド負けのチームだった

　苦い記憶がある。昨年秋、東京大会の準々決勝の二松学舎大付戦で、5回途中からマウンドに上がった近藤は7回に大量6失点し、チームはコールド負け。春の甲子園への道は絶たれた。

「あのときは相手の応援もすごくて、完全に呑まれてしまった。周りもぜんぜん見えていなかったし、音も入ってこなくなってしまって。あそこから変わりました。ピンチのときほど笑顔でいようと思ったんです」

　この日は4回途中、1アウト二、三塁のピンチで登板した。相手の応援が盛り上がる中、そのリズムに合わせ小さく首を縦に振りながら投球した。

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