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甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で“2つの誤審疑惑”「白線の上にボールが落ちた…」横浜vs県岐阜商、波乱のウラ側…密着記者が聞いた、県岐阜商の証言「監督に怒られるので…」
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/20 18:01
横浜vs県岐阜商は延長11回まで続き、7-8の大熱戦。際どいプレーが続いた
「横浜相手に4-0のまま簡単に勝てるわけないでしょ? でも大丈夫。自分たちから崩れなければ、最後はみんなが笑うストーリーになっているから」
その発言に根拠はあったのか。上畑は首を振りながら笑った。
「信じるしかないじゃないですか。最後は絶対、君たちは横浜に勝っている。選手も、僕もそう思い込む。そういうふうにメンタルをもっていきました」
「わずか5カ月」超急造キャッチャー
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10回表、タイブレーク。悪送球とタイムリー安打で県岐阜商は3点を失う。試合を続けるには、10回裏に3点を取らなければならない。やはり、負けてしまうのか。
無死満塁で6番・小鎗稜也が打席に立つ。小鎗の守備位置はキャッチャー。それもチーム事情と自身の怪我から、練習に本格的に取り組んだのは今年3月という超急造の捕手だった。小鎗は明豊を下した3回戦直後にこう話していたものだ。
「甲子園に来てからバッティングは0点です。でも今、キャッチャーとしてはゾーンに入っているというか。盗塁されても相手走者を刺せる気しかしないんです」
その逆の現象が横浜戦で起きた。盗塁は2度決められた。しかし、絶体絶命の10回裏、快音を残した小鎗の打球は左中間を見事なまでに真っ二つに割った。
7-7、同点。
“まさかの”送りバント失敗
つづくバッターは、監督の藤井潤作が「甲子園でヒーローになった」と驚く7番・ライト横山温大だった。横山が甲子園で話していた言葉を思い出した。
甲子園で打てている、好調の要因は何か。記者から質問された横山は言った。
「しっかり振る。誰にも負けないように、フルスイングする。自分が絶対に仕事をする。シンプルですが、それだけを考えてます」
観衆の視線が一点に集まる。横山はゆっくりした足取りで打席へ向かう。審判に頭を下げてバッターボックスに入る。相手のセンター・阿部葉太の治療で空いた間、横山はバットを振り続ける。何かが起こりそうな予感が球場に漂う。
しかし、ここで藤井が焦る。


