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甲子園の風BACK NUMBER
記者の予想は「県岐阜商は甲子園出場すら厳しいチーム」横浜vs県岐阜商、波乱のウラ側…監督は“異色の経歴”「33歳から大学に通い、52歳で名門監督になった男」
posted2025/08/20 18:00
横浜vs県岐阜商は延長11回まで続き、7-8の大熱戦。際どいプレーが続いた
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph by
Hideki Sugiyama
“大番狂わせ”だった。優勝候補本命の横浜、タレント軍団を公立校の県岐阜商が下す。そのウラ側で何があったのか? 県岐阜商に密着した記者がレポートする。【全2回の前編/後編も公開中】
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準々決勝前夜のことだった。県立岐阜商の監督、藤井潤作(53歳)はミーティングで選手たちに言った。
「チャンピオンと試合ができることを楽しもう。思いっきりやろう。自分たちがやってきたことをやれば、勝てる」
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1年生・丹羽駿太が可笑しげに思い出す。
「代打を告げられたときに『楽しめ!』って言われたんですけど、監督の顔は硬かったですね」
10回裏、7-7の同点。丹羽は甲子園初打席で、初球を捉えた。打球がライト方向へ飛んでいく。横浜のライトは捕球できない。県岐阜商の応援団で埋まる一塁側アルプスが沸く。丹羽はボールが着地する瞬間を見た。が、審判のジャッジに気付いた。丹羽に嫌な疑念がよぎる。同時に、監督の言葉が頭に浮かんだ。
「夏の甲子園は出場すら厳しい」
私立優勢の甲子園で、公立高校が勝ち抜くにはどうすればいいか。抽選会の日から県立岐阜商を取材していた。明豊との3回戦を翌日に控えた大阪某所の練習会場。メディア関係者は6人ほど。そのなかに岐阜の高校野球を追い続けて30年以上という岐阜新聞のベテラン記者、森嶋哲也がいた。
「甲子園で2回も勝つなんてね。そもそも県岐商が甲子園に行くなんて思ってなかったんですよ。夏にかけて、甲子園出場を予想していた大垣日大や中京を追っていました」
そもそも県岐阜商とはどんな高校なのか。森嶋記者が教えてくれた内容を大雑把にまとめるとこうなる。

