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驚異の56歳まで現役「競走を“集金”とは思えなかった」生涯獲得賞金30億円“競輪国宝”と呼ばれた神山雄一郎の狂おしいまでの自転車愛
posted2025/08/25 11:02
昨年限りで現役を引退し、今春から日本競輪選手養成所の所長に就任した神山雄一郎(57歳)
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Kiichi Matsumoto
生涯獲得賞金は驚異の“30億円”。名実況・古舘伊知郎が「太もも四輪駆動」「小山のヘラクレス」と捲し立てた競輪界の生ける伝説は今――。神山雄一郎インタビュー全3回、最終回では56歳で引退した現在の生活を語る。【NumberWebオリジナル特集/第1回から公開中】
競輪界のレジェンドと呼ばれる神山雄一郎には異名がいくつもあった。その多くは名物実況で知られた古舘伊知郎アナウンサーに付けられたものである。栃木育ちで筋骨隆々の体から『小山のヘラクレス』と呼ばれ、馬力あふれる脚力を評価されて『太もも四輪駆動』とも紹介された。64センチの太ももを持つ本人が、最もしっくりきたのは自らの競走スタイルに合った『まくり狼』だった。
「実際、“まくり”(残り半周から仕掛ける形)でたくさん勝ちましたからね。狼みたいな感じだったのかな(笑)。いろいろなニックネームを付けてもらい、ファンの人たちに広く知ってもらえたのは良かったと思います」
「何億円を賭けられていても、緊張しない」
まくり狼はどれだけ年齢を重ねても、獲物を追うようにバンクで勝利を追い求めた。自らの脚が賭けの対象となり、オッズも付くが、数字はほとんど気にしていなかった。たとえ、1番人気になっても、目の前のレースで勝つことに集中した。
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「僕の場合、自分に何億円を賭けられていても、緊張することはなかったです。僕らは頑張って走るだけでしたから」


