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「あっ、800万円置いたままだ…」“車上荒らし”に遭ってもナゼ無事だった？ 25歳で原辰徳より稼いだ賞金王・神山雄一郎の競輪に魅せられた40年
posted2025/08/25 11:01
1993年8月、地元・宇都宮競輪場で開催されたオールスター競輪で優勝した神山雄一郎（当時25歳）。デビューから6年目で初めて特別競輪（GI）を制した
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
JKA
生涯獲得賞金は驚異の“30億円”。名実況・古舘伊知郎が「太もも四輪駆動」「小山のヘラクレス」と捲し立てた競輪界の生ける伝説は今――。神山雄一郎インタビュー全3回、第2回は賞金の使い道、盟友の存在、古舘実況を振り返る。【NumberWebオリジナル特集／第3回も公開中】
1980年代の規律は厳しかった。朝6時半に起床し、早朝から乾布摩擦、マラソンもこなした。練習量も今と比較にならないほど多かった。教場では教官が竹刀を持って目を光らせる根性論全盛の時代である。まさに『虎の穴』という表現がしっくりくる。ただ、神山は笑みを浮かべて当時を懐かしんでいた。
「明けても暮れても好きな自転車に乗って走り、夜は同世代の仲間たちと一緒に過ごすわけですよ。高校を卒業したばかりの僕にとっては、毎日が修学旅行のようでした。練習がしんどくなかったと言えば、嘘になりますけど、苦ではなかった。あの時代も本当に楽しかったですね」
滑らかな口調で振り返るその言葉は、きっと本心から出たものなのだろう。在校時の競走訓練成績は堂々の1位。首席で競輪学校を卒業し、いよいよ勝負の世界に身を投じることになる――。
20歳でもらった初賞金18万円
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都市部にはバブル景気の浮遊感が漂っていた時代である。1988年5月、庶民の熱がこもる花月園競輪場（2010年閉場）で神山はデビュー戦を勝利で飾る。横浜市鶴見区の高台にあった、風が舞うバンクを疾走した。ライバルは同期の仲間たち。競輪学校の成績がそのままレースの結果にも反映されたという。初めて手にした賞金は18万円。賞典室という部屋で判子を押し、封筒に入った薄い札束を受け取った日のことは今でもよく覚えている。社会人経験のない高卒の20歳にとっては、大きな金額だった。
