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「今でも納得いかん」桑田真澄はなぜ“甲子園屈指の打者”だったのか? 池田のエース・水野雄仁がPL学園監督に直言した日「伝統の竹バットではなく…」
text by

城島充Mitsuru Jojima
photograph byAFLO
posted2025/08/22 11:01
甲子園で通算6本のホームランを放ったPL学園の桑田真澄
「今でも納得いかんですわ」水野がPL監督に直言した日
最後の夏を終えた水野が、桑田と再び顔を合わせたのは、アメリカ遠征のために招集された全日本高校選抜チームだった。決勝で横浜商を3対0で破り、優勝投手になった桑田は、1年生でただ一人代表に選ばれていた。
チームの初練習が兵庫県の川鉄神戸グラウンドで行われた時、水野は代表監督を務める中村に言った。
「1年生に打たれたのは、今でも納得いかんですわ」
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中村は笑って受け流したが、投手陣の打撃練習が始まると、水野はその思いをぶつけるように先頭をきってケージに入り、鋭い当たりを連発した。その表情が変わったのは、最後に桑田が打席に立ったときだ。
川鉄神戸グラウンドは、両翼91m、中堅112mと決して広くはないが、球場外へのボールの飛び出しを防ぐため、外野は高いネットで囲まれていた。桑田はバッティングピッチャーを務める大学生のボールを芯でとらえると、次々とネットの上段にまで運んでいく。
他の選手たちが目を丸くして打球の行方を見つめるなか、中村に近づいてきた水野は「たった今、納得しました」と、笑顔で頭を下げた。
