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「今でも納得いかん」桑田真澄はなぜ“甲子園屈指の打者”だったのか? 池田のエース・水野雄仁がPL学園監督に直言した日「伝統の竹バットではなく…」
text by

城島充Mitsuru Jojima
photograph byAFLO
posted2025/08/22 11:01
甲子園で通算6本のホームランを放ったPL学園の桑田真澄
「ワンストライクからの2球目、インサイドのまっすぐにヤマを張っていたら、その球が来た。それを打ち損じて、ファウルにしちゃった。それでも、もう1球、同じ球が来るような、そんな流れを感じていたら、水野さんの手からボールが離れる瞬間、あっ、これはホームランだってわかったんです。そんなこと、考えられないでしょう。あれは自分の力で打ったホームランじゃない。“目に見えない力”によって打たせてもらったホームランだと思っています」
1学年上の捕手で、新チームの主将を務めた清水孝悦は「桑田が言う“見えない力”の存在は理解できます。それは僕たちPLの選手みんなが共有してきた思いでもある。でも、あのホームランはそうした力だけで打てたわけではありません」と語る。
PL学園の打撃練習は、竹バットが使われていた。打つと痺れて手首やヒジに負担がかかるため、投手陣の練習は試合前日に金属バットで軽く目慣らしをする程度だった。特筆すべきは、そうした環境で生まれた桑田独特のバッティング理論である。
桑田「バッティングは、キャッチボールと同じ」
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「僕にとってのバッティングは、キャッチボールと同じ感覚なんです」
清水が桑田からそう言われたのは、新チームが始動したころだったか。甲子園で通算6本のホームランを打つことになる後輩は、憎まれ口を添えて続けた。
「キャッチボールもグローブを正確に運んで、芯でパンとボールを捕るでしょ。グローブをバットに置き換えるだけで、バッティングも同じなんです。先輩はキャッチングがめちゃくちゃうまいのに、どうして打てないんですかね(笑)」
「桑田が凄いのは、その感覚を体現できるところなんです」と、清水は言う。
「あの時もヤマを張ったボールをポイントまでしっかりと呼び込んで、体全体の力をミートポイントに集約した。独特の感覚と思い切りの良さ、体のバネ、瞬発力が合わさってあのホームランが生まれたんです」
